研究課題
膵癌術後早期の肝転移は予後を左右する重要な問題である。膵癌細胞では恒常的に炎症性転写因子である nuclear factor-kappa B (NF-kB) が上昇しており、癌細胞の増殖や転移が促進される。また、NF-kBは抗癌剤投与によっても上昇し、薬剤抵抗性を生じることが知られている。膵癌早期肝転移の予防のため先行実験として膵癌肝転移マウスモデルを作製し、NF-kB阻害剤投与により膵癌肝転移が抑制されることを確認した (Saito N et al, Surgery, 2019)。そこで今回、ターゲット遺伝子を同定するため、同マウスモデルにおいてNF-kB 阻害剤投与前後で変動するMicro RNAを解析した。マイクロアレイ解析の結果、手術のみを施行したSham群と癌細胞を接種し治療を行わないControl群で比較したときにmiRNA発現が増強 (Log-ratio 1.5以上)していたmiRNAは21個同定された。一方でControl群とNF-kB阻害剤を投与した治療群で比較したときにmiRNA発現が低下 (Log-ratio 0.5以下)していたmiRNAは22個同定された。それらで共通するmiRNAとして、hco-miR-2159-3p、hhi-miR-7641、mmu-miR-7686-5pの3つのmiRNAが同定された。上記結果より、膵癌肝転移抑制に関わるmiRNAとしてhco-miR-2159-3p、hhi-miR-7641、mmu-miR-7686-5pが示唆された。これらは転移の抑制の新規治療ターゲットや転移時早期のマーカーとして有用な可能性がある。これらが膵癌の早期肝転移に実際に及ぼす影響についてはさらなる検討を要する。
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