研究課題/領域番号 |
19K18168
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
竜川 貴光 旭川医科大学, 大学病院, 医員 (80837914)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エクソソーム / 末梢動脈疾患 / 血管内膜中膜肥厚 |
研究実績の概要 |
当研究は末梢血管疾患患者に対する静脈を用いた下肢動脈バイパス術を行った際、起こりうる重大な術後合併症として内膜中膜の肥厚によるグラフト狭窄があり、そのメカニズム解析による合併症の予防を主たる目的としている。そこで血管の内膜中膜ー外膜の細胞間コミュニケーションに焦点を当て、その相互情報伝達ツールとしてエクソソームの関与に着目し、2019年度より研究を開始した。 本年度はまずサンプル採取から始めた。当施設血管外科での下肢動脈バイパス術施行時に生じた残余静脈を採取し、内膜中膜と外膜に顕微鏡下で分離し、Outgrowth法静脈片からmigrationした細胞を抽出、培養増殖させストックした。回収した細胞は内膜中膜由来のものを平滑筋細胞、外膜由来のものを線維芽細胞と定義した。2019年度の1年で回収保存した検体数は10検体を超えており、当初の最低目標数は確保できている。 続いて、採取した細胞の性質評価を行うべく、細胞培養中の増殖能評価を行った。静脈片からのmigration率及び増殖細胞数カウントにて評価し、比較検討した。外膜由来細胞の増殖性が高い傾向にあることを確認しており、既報と同様であることから、細胞群としての性状の一致性があると考える。 次に外膜由来細胞がもたらす内膜中膜由来平滑筋細胞の増殖への作用を評価すべく、外膜由来細胞の上清を内膜中膜由来細胞に添加することでの増殖能変化を評価した。結果として、増殖に対し影響を与えていることを示唆する結果が出ているが、増殖を促進/抑制させる方向性が異なっている検体もあり、現在試行数を重ねてより方向性を見るとともに、その違いの原因についても研究中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度内の最低目標であるサンプル数の確保と増殖能の評価、細胞間コミュニケーションの評価の最低目標は達成できたと考える。しかし、実験開始当初は細胞の増殖が悪く、体制の安定までに時間を要し、Outgrowth法による細胞抽出が滞り採取を断念した検体もあった。採取から培養までの時間短縮、検体移送中の保存液の変更などで年度後半になり安定して細胞を収集できるようになり、以降は細胞を順調に収集した。 また、本実験では増殖能の評価法としてMTSアッセイを用いた。年度前半での細胞収集の遅れを引きずるようにMTSアッセイの開始、条件設定の調節も遅れ気味になったが、最終的には年度内で条件を固めることができ、遅れを取り戻すように現在試行数を重ねている段階である。結果もそれぞれの検体ではおおむね有意差を認めており、結果を蓄積しその機序に研究へとステップアップしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本実験では外膜から抽出した細胞を線維芽細胞、内膜中膜から抽出した細胞を平滑筋細胞と定義しているが、Outgrowth法による細胞抽出では両者間で細胞が混在している可能性が残る。細胞増殖アッセイにおける結果がこれによるものである可能性を除去するため、純粋細胞株を用いて再度検証する必要があると判断し、現在純粋細胞を調達している。それとこれまでのサンプルとの性質、増殖における影響の結果を比較し、対応性を確かめる予定である。そのうえで、ストックしている細胞群からエクソソームを抽出し、miRNA解析、特定された遺伝子のsiRNAによる増殖能への影響変化の解析を経て外膜と内膜中膜間での相互採用に関する知見を見出していく予定である。
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