研究課題/領域番号 |
19K18170
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
正木 直樹 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00837403)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 総肺静脈還流異常症 / 肺静脈狭窄 / ラパマイシン / 薬剤徐放フィルム / 徐放 |
研究実績の概要 |
我々はブタ肺静脈狭窄モデルを確立しそのメカニズム解明と薬剤徐放フィルムによる予防効果を示してきたが現段階では完全な予防には至っていない。本研究ではより効果的な予防法確立を最終目的の一つとして、薬剤徐放効率を改善させるべく一方向にのみ徐放するラパマイシンフィルムを開発し、肺静脈狭窄症予防への有効性を検討している。 初年度は一方向性徐放フィルムの作製にあたった。一方向性徐放システムの構築として、薬剤を含むdrug layerと薬剤を含まず吸収速度を調整するbarrier layerからなる二層性フィルムを検討している。Drug layer自体の吸収速度を緩徐にするために基材として既存のポリL乳酸-ポリグリコール酸重合体(PLGA50:50)に加え、重合比率の異なったPLGA(65:35、75:25、85:15)のフィルムを作製し、リン酸緩衝液中でインキュベートすることでin vitroでの吸収速度を検証した。50:50のものでは1ヶ月時点で吸収率80%程度であるのに対し、他の比率のものは約20%程度であった。臨床上は数ヶ月での吸収が理想的と考えておりdrug layerとしてはPLGA50:50を用い、barrier layerで吸収速度を調整することとした。Barrier layerの基材としてはポリカプロラクトン単剤、ポリ-L-乳酸単剤、配合比率の異なるPLGA(65:35、75:25、85:15)を検証した。それぞれ非常に硬い素材であるが厚さ50µm程度のフィルム状構造にすることで柔軟性が高くなることが確認された。ただしポリカプロラクトン単剤のフィルムは血管周囲に適用するにはやや硬性が強く不適と思われた。多層化に関しては各々の層を個別に作製しラミネート加工を施すことで多層化する方法を考案した。現在多層化したフィルムのそれぞれの吸収動態を検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多層性フィルムの作製方法は確立したが各層の基材の違いによる吸収速度の差異に関してはまだ検証できていない。また、現時点では薬剤を含んでいない基材のみでのフィルムの吸収動態を検証したのみにとどまっており今後は薬剤を含んだフィルムでの薬物自体の徐放特性を検証して行く。
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今後の研究の推進方策 |
各層の基材の異なる二層性フィルムの吸収動態、薬剤徐放特性に関して検証して行く。薬剤を含んだフィルムを作製し、U字管を用いリン酸緩衝液内でインキュベートすることでin vitroでの一方向徐放性能、徐放速度を検証することを検討している。in vitroでの徐放特性を検証したのち、ブタの頸静脈周囲にフィルムを適用し、in vivoでの薬剤徐放性能、徐放速度を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィルムの作製にあたり基材の選定に時間を要している。本年度はフィルムを作製し動物実験等にかかる諸費用を計上する予定である。
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