我々はブタ肺静脈狭窄モデルを確立しそのメカニズム解明と薬剤徐放フィルムによる予防効果を示してきたが現段階では完全な予防には至っていない。本研究で はより効果的な予防法確立を最終目的の一つとして、薬剤徐放効率を改善させるべく一方向にのみ徐放するラパマイシンフィルムを開発し、肺静脈狭窄症予防へ の有効性を検討している。 一方向性の徐放に関しては血管周囲に貼付することから柔軟性を確保した薬剤を含むdrug layerと吸収速度を調整するbarrier layerから成る2層構造フィルムを想定し各layerの基材としてポリカプロラクトン単剤、ポリ-L-乳酸単剤、配合比率の異なるPLGAで検証してきた。それぞれのin vitroでの 吸収速度の検証を行った。 実際にラパマイシンを含有しているdrug layerでの一方向性の徐放、徐放速度の検証を行なっている。コントロールとしてはラパマイシンの含有のない基材のみを使用して行なった。 in vitroでの実験は困難であり、in vivoの実験を先行し実際の生体反応を検討することにした。ブタの実際の肺静脈モデルを使用する以前に、比較的アプローチが簡便で、侵襲の少ないブタ頸静脈を露出しフィルムを貼付する実験を計画した。一方向性に薬剤が継続的に徐放されることを検討したが基材の剛性が強く、血管周囲のみに貼付することが難しく安定した結果を出すのが困難であった。今後は東北大学創生応用医学研究センターの阿部俊明教授、永井展裕助教の協力を得て眼科領域で研究中の経強膜ドラッグデリバリーシステムを血管壁に応用できないか協議し、実験計画を立案していく方針である。
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