近年自己心膜を用いた大動脈弁再建術の有用性が多数報告され広く普及し始めているが、その耐久性に関しては不明な点があり、より耐久性の高い方法の検討が必要と考えられる。既存の機械弁に用いられる素材にグラファイトが使用されているが、グラファイトをシート化し厚みを薄くする技術も進歩している。また、グラファイトシートは軽量で柔軟であるため加工が容易という特徴がある。この特性を生かしてグラファイトシートを自己心膜の代わりに大動脈弁再建術に用いることで、耐久性の向上につながる可能性があると考える。本研究は、グラファイトシートを用いた大動脈弁再建術の基礎研究を行うことを目的として、グラ ファイトシートの血栓性の評価、最適な厚ささの評価や開閉試験による弁の性能および耐久性評価を行う予定した。 はじめにグラファイトシートの模擬弁輪への縫着を施行する際のシートの離開が問題となった。シートの厚さや糸の種類を変えて検討を重ねたが、縫合針の刺入部から用意に亀裂がはいる状況であった。3Dプリンターでの模擬弁輪作成を行いグラファイトシートを縫合し、心臓機能の模擬ファントムであるALPHA HCPCP回路内に組み込み、拍動下での弁の観察実験を試みた。しかし、弁輪縫合部の脆弱性による不安定性から当初予定していた、弁の可動性や耐久性といった次の段階の研究へは進むことができなかった。グラファイトシートの自己心膜の様な弾力性に乏しいことが問題と考えられた。
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