研究実績の概要 |
先天性心疾患修復術後遠隔期における右心不全は、右心室の相対的虚血、線維化による拡張能障害によるとされ、予後不良である。今回我々は、右心不全モデルに対するhiPS-CM移植により血管新生の促進ならびに心筋線維化を抑制し右心機能の改善が得られることを仮説とし、検討を行った。 F344/NJcl-rnu/rnu rat(7-9週齢,雄,180-210g)の肺動脈絞扼(PAB)による右心不全モデルに対し、PAB後4週にhiPS-CMシートを右室前面に移植した群(S群;10例)とsham手術を行った群(P群;10例)でPAB後8週の心臓カテーテル検査(Cath)データならびに病理学的所見(His)を評価した。 Cath:拡張能である右室拡張末期圧、右室圧下行脚時定数τ、右室拡張末期圧・容積関係 においてhiPS-CM群で有意に改善を認めた(P<0.05)。また、一回仕事量および心拍出量がhiPS-CM群で有意に増加していた(P<0.05)。 PET/CT:11C-Acetateを用いたPET/CTで算出された、心筋酸素消費量の指標であるKmonoは両群間に有意差は認められなかったが、KmonoとCathで計測・算出された心拍数(HR), 右室収縮期圧(RVESP),一回拍出量(SV)を用いた心筋仕事効率(CE;(RVESP×HR×SV)/Kmono)は、hiPS-CM群で有意に増加していた(P=0.04)。 His:Sirius-red染色では右室心筋線維化率がhiPS-CM群で有意に改善し(P<0.001)、Von Willebrand因子染色では右室微小血管密度がhiPS-CM群で有意に上昇した(P<0.001)。さらに、RT-PCRでは血管新生関連因子であるVEGF, HGF, PDGFの発現がhiPS-CM群で有意に増加していた(P<0.05)。また、hiPS-CMは移植後4週でも生着していることが確認された。 以上より、hiPS-CMシート移植は、右室心筋線維化の抑制ならびに微小血管新生により右室拡張障害を改善させることが示唆された。
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