本研究は、重症心不全に対する補助人工心臓の治療効果を分子生物学的視点から評価し、新たな心不全治療開発への知見を蓄積することを目的としている。これまでに、本研究室では、細胞骨格関連蛋白質であるFhod3に注目し、マウス心筋細胞における機能解析を行い、心臓の発生段階および成熟心臓での心保護作用を報告した。また、ヒト拡張型心筋症および肥大型心筋症の原因遺伝子の1つであることが知られており、本研究では重症心不全患者のヒト心筋細胞におけるFhod3の機能を明らかにすることを目指している。 初年度では、マウスでの解析実績をヒトFhod3の機能解析で踏襲できなかったために、新たなヒト心筋サンプルの採取とFhod3の検出方法の確立を目指した。次年度では、ヒト心筋サンプルの追加採取とFhod3の検出方法の確立を目指すと同時に、各種心不全マーカーの蛋白質・mRNAレベルでの解析を行った。単回手術から得られたヒト心筋サンプルにおける各種心不全マーカーについて、臨床データとの相関を解析したが、明らかな相関関係を見いだせなかった。最終年度では同一症例で異時的に取得したヒト心筋サンプルを用いて、各種心不全マーカーの蛋白質・mRNAレベルでの解析および関連する細胞内情報伝達蛋白質の定量解析を行うも、時間経過を考慮しての蛋白質・mRNAレベルに明らかな違いを見出すには至らなかった。また、臨床的心不全の程度に関わらず、Fhod3の発現量に明らかな違いもなかった。
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