研究課題
本研究の目的は、心疾患において心筋におけるDHAを中心とした脂肪酸含有リン脂質の組成の違いを動物モデルおよびヒト検体を用いて基礎的および臨床的検討を行うことである。具体的には、DHAの作用機序、特に心筋組織の線維化などの組織学的な変化(リモデリング)を抑制する作用について、リン脂質の脂肪酸組成に着目して検証する。マウスおよびヒト心筋において、他の脂肪酸含有リン脂質と比較して、DHA含有PC・PEが多く含まれていることを明らかにし、心房細動患者におけるDHA含有リン脂質組成の違いを検討している。当院心臓血管外科において、様々な心疾患患者の心臓手術に際して実施された左心耳切除術で得られた左心耳組織からリピドローム解析を行いDHA含有リン脂質組成を解析した。腎機能・維持透析・心筋障害の重症度など、様々な患者背景によってリン脂質組成が変化することが検討できている。現在左心機能の保護された狭心症に対する冠動脈バイパス患者に限定し、心房細動発症の既往および術後心房細動発症の有無で、患者背景、心筋代謝マーカー、左心耳組織の線維化等と関連するかを比較検討している。また、今後これらの左心耳検体に対して、炎症や線維化の組織学的評価も行い、線維化の指標となる血清中Galectin-3、マッソン・トリクローム染色、M1様、M2様マクロファージの指標評価を免疫組織化学染色にて、遺伝子およびタンパク発現の評価(IL-6、TNF-α、α-SMA、MCP-1、CD11c、F4/80)をqPCRおよびウエスタンブロットにより行う。
4: 遅れている
心房細動患者にDHA含有リン脂質組成の違いの検討を行い、得られた左心耳組織からDHA含有リン脂質組成を解析している。左心機能の保護された狭心症に対する冠動脈バイパス患者に限定し、心房細動発症の既往および術後心房細動発症の有無で、患者背景、心筋代謝マーカー、左心耳組織の線維化等と関連するかを比較検討している。ほかにも様々な患者背景で比較検討し解析をすすめている。また、解析方法に関して難渋しており、AIを用いた解析なども考慮中であるため、研究計画よりも遅れている。心筋梗塞後心不全モデルおよび心肥大モデルマウスを用いての検討に関しては、準備段階にあり研究計画よりも遅れている。
今後得られているデータのAIを用いた解析を行う。左心耳検体に対して炎症や線維化の組織学的評価を行う。また動物実験モデルでの研究をすすめる予定である。
昨年度はコロナ感染拡大の影響で、県をまたいだ実験室への移動に制限があり、今年度に繰り越す必要性があったため。
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