研究課題/領域番号 |
19K18195
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
山本 暢子 関西医科大学, 医学部, 助教 (90580689)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 下肢閉塞性動脈硬化症 / 重症下肢虚血 / Perfusion Index |
研究実績の概要 |
閉塞性動脈硬化症は高齢化や糖尿病の増加に伴い、今後もますます罹患患者の増加が予想されている。一般には軽度の間歇性跛行で発症、進行するにつれて安静時痛や下腿潰瘍・壊死など重篤な症状(重症下肢虚血)になると考えられてきた。しかし糖尿病患者などでは無症状からいきなり重症下肢虚血になることもある。潰瘍・壊死などを伴った場合、いくらその時点で有効な血行再建を行なっても、その後の潰瘍・壊死治癒までには多大な時間を有する。これらのことからも重症下肢虚血を事前に食い止めることは患者QOLに加え医療経済的にも非常に重要である。しかし従来のAnkle Brachial pressure Index(ABI)や皮膚灌流圧(SPP)では、検査時の血流を測定することはできるが悪化の予知はできない。また検査室で測定するため日常診療での時間的拘束も生じる。 一方、技術の進歩によりある種の経皮的酸素飽和度測定装置では、その脈波を解析することで末梢循環における血流量を推定することができるようになった。その一つがPerfusion Index(PI)である。具体的には経皮的酸素飽和度測定装置での脈波波形を分析し、動脈内の拍動性信号と非拍動性信号の比率により求められる灌流指標である。 これまでの研究では閉塞性動脈硬化症で重症度が高くなるに従い、足趾のPIは低値となることがわかっている。またABIやSPPとの比較では、症例数の少なさやそれぞれの検査の特性からも強い相関は認めていなかった。 今回の研究で我々は、PIを用いて下肢閉塞性動脈硬化症診療における悪化の予測として使用できないか検討し、日常診療における重症化の簡便なスクリーニングとして用いることができないか調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年3月現在、418人の患者でPIを測定した。また2016年8月までに登録していた70人79肢について検討したものを日本血管外科学会雑誌に論文として投稿し受理、現在掲載待ちである。当論文においては、登録症例を閉塞性動脈硬化症の重症度によってグループ化し、虚血症状が重症になるにつれ、すなわち安静時痛や壊死が生じた症例ではPIが低値となることがわかった。また重症下肢虚血(CLI)でのPI平均値のカットオフ値をROC曲線から0.27と設定し、この値を用いて間欠性跛行群の中でも1年以内にCLIとなった症例もしくは初診時に皮膚灌流圧が40mmHg以下であった症例、つまり潜在的重症虚血(重症IC)群ではその他の間欠性跛行(軽症IC)群に比べるとPI平均値が0.27以下になる症例が有意に多かったことも示している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はPIを測定した418人について前述のカットオフ値を下回った場合、将来的な重症下肢虚血への進展の予測因子となりうるか検討する。また糖尿病性足病変やバージャー病におけるPI測定値の意義についても検討したい。数人の症例では複数回にわたりPIを測定しており、また血行再建後の症例も含まれている。これらの症例についても検討し、PIの経時的な推移や血行再建後の再狭窄予測因子となりうるかも検討する必要があると考えている。 最終的にはこれらの検討結果について英語論文を作成し投稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度は患者リクルートとデータ収集および学会での情報収集を中心に行なった。新型コロナウイルス感染症蔓延により一部学会が中止となったため次年度への繰り越しが生じてしまった。次年度は引き続きデータおよび情報収集を行いながら、データの解析を行い学会発表・論文作成をする予定である。これにあたりデータ解析ソフトの購入や学会出張の旅費、論文英語翻訳・校正費用が必要と考えている。
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