研究課題
閉塞性動脈硬化症は高齢化や糖尿病の増加に伴い、今後もますます罹患患者の増加が予想されている。一般には軽度の間歇性跛行で発症、進行するにつれて安静時痛や下腿潰瘍・壊死など重篤な症状(重症下肢虚血)になると考えられてきた。しかし糖尿病患者などでは無症状からいきなり重症下肢虚血になることもある。潰瘍・壊死などを伴った場合、いくらその時点で有効な血行再建を行なっても、その後の潰瘍・壊死治癒までには多大な時間を有する。これらのことからも重症下肢虚血を事前に食い止めることは患者QOLに加え医療経済的にも非常に重要である。しかし従来のAnkle Brachial pressure Index(ABI)や皮膚灌流圧(SPP)では、検査時の血流を測定することはできるが悪化の予知はできない。また検査室で測定するため日常診療での時間的拘束も生じる。一方、技術の進歩によりある種の経皮的酸素飽和度測定装置では、その脈波を解析することで末梢循環における血流量を推定することができるようになった。その一つがPerfusion Index(PI)である。具体的には経皮的酸素飽和度測定装置での脈波波形を分析し、動脈内の拍動性信号と非拍動性信号の比率により求められる灌流指標である。これまでの研究では閉塞性動脈硬化症で重症度が高くなるに従い、足趾のPIは低値となることがわかっている。またABIやSPPとの比較では、症例数の少なさやそれぞれの検査の特性からも強い相関は認めていなかった。今回の研究で報告者らは、PIを用いて下肢閉塞性動脈硬化症診療における悪化の予測として使用できないか検討し、日常診療における重症化の簡便なスクリーニングとして用いることができないか調査している。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Vascular Surgery Cases, Innovations and Techniques
巻: 9 ページ: 1-4
10.1016/j.jvscit.2023.101138