研究課題/領域番号 |
19K18201
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
島村 淳一 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 客員研究員 (20827696)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 重症心不全 / 左室補助人工心臓 / 同期不全 |
研究実績の概要 |
2020年度は左室補助人工心臓装着後心室間同期不全現象に関して以下の要領で検討を行った。 1. 心不全モデルにおける心室同期不全現象の検討。昨年度は正常心機能を有する大動物モデルにおいて左室補助人工心臓装着後心不全同期不全現象に関する定量化及び機序解明に関する検討を行ったが、より重症心不全に対する機械的補助治療に即した生理学的検討を目的として、心不全条件下における同現象の観察及び血行動態に及ぼす影響に関して検討を開始した。具体的にはβ遮断薬投与による薬剤性心不全モデルや、外科的冠動脈結紮もしくはカテーテルによる冠動脈閉塞による急性、慢性心不全モデルを作成することにより心不全条件下における本現象の観察を試みている。また、心機能評価方法としては、昨年度用いたコンダクタンス法に加え、臨床的評価方法としても確立されているスペックルエコー評価による詳細な心室中隔、右心機能の評価を行なっている。 2.数理学的検討。動物実験による左室補助人工心臓装着後心室間同期不全現象の検討に加え、昨年度施行したMock回路及び数理モデルを用いた数理学的検討を発展させCF-LVAD定常回転数補助および心拍同期制御回転数システムが大動脈弁および僧帽弁逆流に及ぼす効果に関しても数理学的検討を行った。(Evaluation of cardiac beat synchronization control for a rotary blood pump on valvular regurgitation with a mathematical model. Ogawa D, Shimamura J, et al. J Artif Organs. 2021 Feb;45(2)124-134.)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに上記研究課題に対して、大動物実験を用いて心室間同期不全現象の定量化及び機序解明を行うとともに、数理学的なアプローチを用いてより詳細に様々な補助条件下における血行動態パラメーターや心臓弁逆流に関する検討も行なっており、概ね順調に研究は進行していると考えられる。本年度も学術論文発表に加え、心臓血管外科関連学会および人工臓器関連学会における学会発表活動も行い、研究内容の発信を行なった。左室補助人工心臓治療時における心室間相互作用の解明を通じてより安全で生理的な左室補助人工心臓治療を目指す本研究の臨床的及び基礎研究意義を評価され、人工臓器臓臓器領域における主要学術誌であるJournal of Artificial Organsの掲載論文から優秀論文に対して送られる日本人工臓器学会論文賞(循環領域)を受賞することができた。(Quantification of interventricular dyssynchrony during continuous flow left ventricular assist device support, Mathematical evaluation of cardiac beat synchronization control used for a rotary blood pump両論文に対して受賞した。)
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今後の研究の推進方策 |
今後は上記研究課題、ならびに重症心不全に対する左室補助人工心臓治療がおよぼす関連する生理学的効果に関して以下の要領で研究推進を行う予定である。まず、大動物実験においては、昨年度開始した急性、慢性心不全モデルの作成、コンダクタンス法に加えてスペックルエコー法を用いた心室中隔運動や右室機能評価を継続する。これらの検討により心室間同期不全に付随する心室間相互作用の評価、及び関連する左室補助人工心臓装着後臨床的課題(右心機能不全、心室中隔偏位)の評価を目指す。さらに、これまでに施行した心機能能解析を用いた血行動態の検討に加え、末梢微小循環の観察を行うことにより左室補助人工心臓治療が心臓のみならず末梢循環血行動態に及ぼす影響に関しても検討を予定している。これにより中枢、末梢循環双方における生理学的検討が可能と考えられる。末梢循環評価方法としては臨床的評価方法として確立されているLaser Speckle Flowgraphy法を用いた網膜血流、皮膚血流の評価を予定している。さらに、同時に研究を進めている数理学的解析を継続し、左室補助人工心臓の生理的な補助方法として着目されている心拍同期制御システムの数理的解析と合わせ、今後もより安全で生理的なLVAD 制御方法の開発を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度にコロナ感染症による影響により予定していた国内外学会参加、および共同研究機関との研究打ち合わせをキャンセルをせざるを得なかったこと、また動物実験に関しても実験の中止期間が生じ、研究関連費用に関して当初予定額からの変更があったため、次年度使用額が生じている。本年度使用額に関しては、主に実験関連物品購入、関連書籍の購入を行う予定である
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