研究課題/領域番号 |
19K18222
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
武藤 哲史 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90722570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | cancer immunotherapy / tumour immune evasion / beta-catenin / 腫瘍浸潤リンパ球 / 非小細胞肺癌 |
研究実績の概要 |
2019年度は研究用検体が十分に保存されている非小細胞肺癌に対する根治手術を受けた症例を対象に、非小細胞肺癌における免疫チェックポイント阻害薬耐性メカニズムの候補と考えられる6つのメカニズムについて、その臨床的意義を検討した。それぞれ免疫組織化学法や全エキソーム解析により検討を行った。 その結果、非小細胞肺癌においては1. JAK/STAT経路の活性化、2. PI3K/AKT経路の活性化 の頻度は比較的少ないことが分かった。3. 上皮間葉移行の傾向、4. HLA発現の低下、5. RAF経路の活性化 については、ある程度の頻度で認めたものの、それらが肺癌の局所微小免疫環境に及ぼすメカニズムは明らかでなかった。6. Wnt/β-catenin経路の活性化 については、tumor mutation burdenが高くneo-antigenが豊富と考えられる症例においても、腫瘍への抗原提示細胞やリンパ球の浸潤を抑制し、非小細胞肺癌における癌の免疫逃避メカニズムの一端を担っている可能性を見出した。現在論文を作成し投稿中である。 今後、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた症例を対象に治療効果との関係を明らかにすることで、免疫チェックポイント阻害薬の耐性メカニズムとして作用しているか検討を行う予定である。それにより、非小細胞肺癌の治療標的として新たな治療法や治療薬の研究開発に結びつく可能性があり、非小細胞肺癌患者の治療成績向上が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は当院で免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた進行・再発非小細胞肺癌患者を対象に、免疫組織化学法とmRNA発現解析、全エキソーム解析を行う予定であった。ただし、実際に免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた患者が、進行癌では小さな生検組織しかなかったり、再発癌では初回手術が遺伝子解析用検体の開始時期以前の症例がほとんどであったりした。このため、組織量が豊富な、根治手術による外科的切除術を受けた非小細胞肺癌患者を対象に、まず本研究で明らかにしたい6つの耐性メカニズム候補について検討することとした。 その結果、非小細胞肺癌においては1. JAK/STAT経路の活性化、2. PI3K/AKT経路の活性化 の頻度は少ないことが分かった。3. 上皮間葉移行の傾向、4. HLA発現の低下、5. RAF経路の活性化 については、ある程度の頻度で認めたものの、それらが肺癌の局所微小免疫環境に及ぼすメカニズムは明らかでなかった。6. Wnt/β-catenin経路の活性化 については、tumor mutation burdenや腫瘍へ浸潤する抗原提示細胞やリンパ球との関係を明らかにし、非小細胞肺癌における癌の免疫逃避メカニズムの一端を担っている可能性を示した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は免疫チェックポイント阻害薬の治療効果との関連性を検討する計画としている。免疫組織化学法によるβ-cateninの発現と治療効果判定、および腫瘍のPD-L1発現、腫瘍浸潤リンパ球についても評価を行い、その関係を明らかにする予定である。何らかの関係性を見出せた場合には、それを学術雑誌に論文として報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿等にかかる経費や、それによって発生する追加実験等にかかる費用として使用する予定である。
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