研究課題
非小細胞肺癌の治療は免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きく変化した.さらに免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用療法が標準治療となり,その治療成績は以前と比べ大幅に改善した.しかし,それでもなお長期的効果のある症例は約半数程度に限られている.そこで本研究では免疫チェックポイント以外の免疫逃避機構に着目し,その中でも特に非小細胞肺癌において関係の深いメカニズムを明らかにすることを目的とした.予定通り約150例の非小細胞肺癌組織検体を用いて,関連するタンパクの発現を調べ,全エキソーム解析によりその遺伝子変異の有無を検索した.その結果,非小細胞肺癌においてはJAK1/2,PIK3CA,PTENの遺伝子変異は比較的頻度が少なく,予後との間に有意な関係を認めることができなかった.一方β-cateninの高発現は約20%の症例に認められ,予後不良であった.これらの症例ではtumor mutation burden (TMB) が多いにも関わらず,抗原提示細胞およびCD8 T細胞の腫瘍局所浸潤が少なく,結果的にPD-L1 tumor proportion score (TPS)も低いことを明らかにした.β-cateninを介した免疫逃避メカニズムは悪性黒色腫では研究が進んでいるが,非小細胞肺癌では解明されていなかった.われわれはTMBやPD-L1 TPSとの関係において,非小細胞肺癌でのβ-cateninを介した免疫逃避メカニズムを明らかにし,新たな知見を得た.これは免疫チェックポイント阻害薬の耐性メカニズムと考えられ,今後の治療成績改善・新規治療法開発に向けて大きな意味があるものと考えられる.
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