研究課題/領域番号 |
19K18228
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
楠本 英則 近畿大学, 大学病院, 講師 (60714904)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 術後肺瘻 / 胸腔内ガス |
研究実績の概要 |
肺切除術後の肺瘻の有無を客観的に評価するために胸腔ドレナージシステム回路内より胸腔内ガスを採取し酸素投与時と酸素そうよ後の胸腔内酸素濃度を測定し、この濃度の差がゼロとなった時点で肺瘻が停止したと判断できることを裏付ける症例を集積した.肺瘻の定量化できる優れた方法であることを確認したが,より簡便に評価できる方法を模索し,胸水内に含まれる酸素ガスおよび二酸化炭素ガス濃度を測定することを検討中である.大気中に酸素ガスは多く含まれているおり,わずかな変化では有意な差として認識されない可能性が十分にある一方,二酸化炭素はわずか0.03%程度しか含まれていないことからわずかであっても変化を感知しやすいと考えられる.このことから,肺瘻がある状態では胸腔内の二酸化炭素濃度が大気中より上昇し,肺瘻が減少するとともに二酸化炭素濃度が減少すると仮説を立て,二酸化炭素濃度を測定するために胸水を採取し,ガス分析装置にて解析を行う症例を集積中である.集積された結果からは胸水中の二酸化炭素分圧にはばらつきがある一方,胸水中に含まれる総二酸化炭素量は肺瘻の減少に伴い低下していく傾向が認められる.このことから,この値が定常状態となった時点が肺瘻停止として認識されると考えられる.この方法で肺瘻の有無の客観的評価ができるようになれば,より一般的に普及している装置を用い肺切除後のドレーン管理ができるようになると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在集積中の症例は一定の傾向を示しているものの,いずれの症例でも早期に術後肺瘻が停止しており,肺瘻が遷延している症例との比較が不十分である.また,溶液中のガス濃度は不安定であり,最適な検査条件の検索が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
自然気胸では肺瘻が遷延し保存的治療から外科治療へと移行する症例があるが,これらの症例ではいずれも胸水の量が微量であり採取が困難である.再手術が必要な症例(高度気腫肺や高度分葉不全症例など)の症例を蓄積し,良好な術後経過を示す症例との比較が必要である.
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次年度使用額が生じた理由 |
仮説が正しいことを確認するためパイロットスタディとし,検査機器を購入せず,期間限定で借用利用しデータを収集したため.今後,正式購入しデータ収集予定である.
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