研究課題/領域番号 |
19K18231
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長谷 由理 北海道大学, 大学病院, 助教 (20626121)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 吸入麻酔薬 / 麻酔薬濃度 / 脳内ATPase活性 / 19F-NMR測定 |
研究実績の概要 |
脳内ATPase系に対する全身麻酔薬の作用を、前年度よりさらに詳細に定量的に解析した。 基本的に、ウサギおよびラット脳から精製したNa,K-ATPaseの活性を,ATPの加水分解の結果生じたPiをChifflet法により定量して測定することにより、ATPase活性に対する desflurane,sevofluraneおよび isofluraneの作用を評価した.従前の実験を応用して、マイクロチューブを用いた、閉鎖系における実験方法を確立した。マイクロチューブ内でウサギおよびラット脳のNa,K-ATPaseを含む反応液に各種吸入麻酔薬を加え、ATPase加水分解反応を開始した。その反応停止後に試験管内でChifflet法に従って定量し、吸光度測定により酵素活性を評価した。結果として、各種吸入麻酔薬により濃度依存的にNa,K-ATPaseの活性は阻害され、阻害強度はisoflurane, sevoflurane, desfluraneの順となった。使用した各種吸入麻酔薬の水中濃度は、昨年同様、トリフルオロ酢酸と各種吸入麻酔薬の19F-NMR(核磁気共鳴)スペクトルの面積を比較することにより,濃度決定を行った。 コロナによる影響で研究活動に制限は生じたが、従前の研究の総括を論文執筆し、またオンライン学会にて研究成果を発表する機会があった。さらに、所属する麻酔メカニズム研究会を通じて、研究テーマである麻酔薬の作用機序について、全国の研究者とオンラインでの情報交換・意見交換をする場を経験し、実験以外での研究面において幅広い知見を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 新型コロナウイルス感染拡大防止のための北海道大学の行動指針に従い、研究に制限が加わったことなどから、今年度は実験を積極的に進めることが困難であった。 昨年一時期はレベル3段階で研究を中断し、その前後長く維持されているレベル2でも中等度の制限があるため、従来と同様の実験や、今後計画していた実験も一部見送る必要があった。高レベルが解除された後も、感染防止のために、学生教育や臨床現場で今まで以上の対応に迫られ、人的・時間的余裕がなくなり、実験・研究に専念できる時間も大幅削減となった。
|
今後の研究の推進方策 |
現在大学の研究活動に対する制限が緩和されつつあるため、可及的に実験を早く進める予定である。揮発性麻酔薬の濃度測定法および閉鎖系でのNa,K-ATPaseの活性測定手法を確立できたため、それを応用する形で、他のATPaseの酵素活性測定など新たな実験を予定している。揮発性麻酔薬のNa,K-ATPase阻害は、あまり顕著ではないため、明らかな阻害の認められている報告のある、Ca,Mg-ATPaseに対する作用をマイクロチューブを用いた閉鎖系で見て、比較する。また、Lipid raftに存在する酵素という立場から、Na,K-ATPaseに対する作用を再検討する。追加実験を行い、従前の研究結果をまとめて論文投稿することを目標としている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
既述した同様の理由により、実験が大幅に制限され、予定していた実験が滞った。そのため、実験に必要な物品の購入を見送った。また、参加する学会も中止もしくはオンライン開催となったため、参加費や旅費は予定額より大幅に減額となった。次年度以降、実験計画の進展 により必要物品も増える予定があるため、計画的な使用を検討する。
|