研究実績の概要 |
希釈式自己血輸血を実施する際に採血した血液をROTEM(Tem International, Munich, Germany)を用いて凝固活性の変化を経時的に評価した。 2020年3月末時点で12症例(男性6名、女性6名)の希釈式自己血輸血実施症例でROTEMを測定した。測定項目は凝固系の内因系および外因系を評価できるINTEMおよびEXTEM、血漿フィブリノーゲン値と正の相関を認めるとされるFIBTEMにつきclotting time (CT), clot formation time (CFT), alpha-angle, Amplitude 10 min after CT (A10), Maximum clot firmness (MCF)を測定した。採血直後、4時間後、8時間後、12時間後、24時間後の5点で測定を行った。 CTおよびCFTはEXTEM、INTEM、FIBTEMのいずれでも有意な経時的変化を示さなかった。A10、A20、MCF はFIBTEMでは採血後24時間後も変化しなかったが、EXTEMでは8時間後より、INTEMでは4時間後より統計学的に有意に低下した。EXTEMおよびINTEMのMCF減少率は最大それぞれ13%と12%であり、測定値はINTEMの1測定点を除きすべて正常範囲内であった。 内因系・外因系凝固因子活性およびフィブリノーゲン活性は室温下24時間後も維持された。一方、EXTEM、INTEMのA10、A20、MCFが減少しており、血小板機能あるいは複数の凝固因子活性の低下が示唆された。しかしながら、採血後24時間経過したMCFの低下率は15%未満であり、採血後8時間経過後も凝固因子や血小板の補充目的でHATが有用である可能性が示唆された。 上記の内容の一部は2019年度日本麻酔科学会で発表した。
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