目的:本研究は、希釈式自己血輸血が赤血球の保存のみならず凝固因子や血小板の補充を目的として使用できる時間を明らかにするためにトロンボエラストメトリーを用いて希釈式自己血輸血の凝固機能の継時的変化を調べた。 方法:2018年8月から2019年1月までに希釈式自己血輸血を行った12名の患者を対象とした。血液を採取し、60~80rpmで24時間、室温で振盪した。採血直後(コントロール)、採血後4、8、12、24時間後にトロンボエラストメトリーを用いて血栓形成を評価した。 結果:FIBTEMのMCF(Maximum Clot Firmness)は有意に変化しなかった。EXTEMのMCFは時間依存的に有意に低下したが,いずれも正常範囲内であった。EXTEMのMCFの最大変化率は12.4%[95%信頼区間(CI):9.0%-15.8%]であった。血小板機能を反映するEXTEMとFIBTEMの最大血栓弾性率(MCE)の差(MCEEXTEM-MCEFIBTEM)は、採血後8時間以降、有意に減少した。MCEEXTEM-MCEFIBTEMの最大変化率は、採血後24時間で30.2%(95%CI:17.6%-42.9%)であった。 結論:時間依存性にMCEが有意に低下したが、FIBTEMとEXTEMのMCFは24時間保存までは正常であった。ANHの血液は、採血後8時間以上室温で保存すれば止血目的に使用できる。今後、ANH血液を遅延輸血した場合の患者の止血に関する臨床的影響を明らかにする必要がある。
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