研究課題/領域番号 |
19K18235
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大西 詠子 東北大学, 大学病院, 助教 (10822265)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経ブロック超音波造影剤 / 脊椎超音波画像構築 / ソナゾイド / 末梢神経ブロック / 硬膜外ブロック |
研究実績の概要 |
次世代の超音波ガイド下神経ブロックの開発として、以下の研究を行なっている。 ①神経ブロック造影剤を確立するため超音波造影剤ソナゾイドの有効性を検証する ②超音波画像装置で脊柱管を鮮明に描出する超音波画像処理モードを構築する 超音波ガイド下神経ブロックは周術期およびペインクリニックで広く使われており、鎮痛法とし大きな役割を担う。しかし、薬液到達範囲を正確に確認できない。効果を上げるため針を臓器や神経のそばへ近づけ、大量の局所麻酔薬を投与しているが、薬液の広がりが分かれば、ブロック針の適切な位置や局所麻酔薬の必要量を検討することができる。そこで、すでに肝腫瘍などで使用されている超音波造影剤ソナゾイドを神経ブロック造影剤として利用できないかと考え、ラットやご遺体で検討を重ね、臨床研究を行うことになった。局所麻酔薬に添加し投与することで、正確な薬液の広がりを確認できる。臨床研究では硬膜外麻酔、末梢神経ブロックそれぞれにおいて造影効果の有無やX線造影剤との比較、有害事象の有無を検証する。 脊柱管を描出する超音波画像装置は、脊椎表面の輪郭を強調する超音波イメージング技術である改良エンベロープ法を用いて検証している。角度の異なる椎体の傾きに対し、超音波ビーム角度を調整し、輪郭を強調していく。目的は、上下の脊椎の間「椎弓間隙」を描出することである。麻酔科で最も古くから行われている神経ブロックの1つである硬膜外麻酔は、このわずか直径0.5-1.0cm程度の椎弓間隙に向けて体表から盲目的に針を穿刺していく。強力な鎮痛効果を得られるが、高い技術を要するため、不適切なカテーテル挿入や合併症の報告もある。改良エンベロープ法は硬膜外麻酔を超音波画像を用いて可視化するための技術である。 安全で確実な神経ブロックのために、この2つの研究は非常に重要な役割を担う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ソナゾイド ソナゾイドが神経ブロック造影剤として有効であるかを検証するため、周術期患者やペインクリニック患者を対象とした臨床研究を行うこととした。そこで、「末梢神経ブロック」と「硬膜外ブロック」両方で検証する計画を立て、プロトコルを作成した。当初の計画よりは、プロトコル作成に時間を要したが、現在倫理委員会で審査を行なっていることろであり、承認が得られれば、研究を開始する予定である。 2)改良エンベロープ 椎弓表面を強調する超音波画像を描出するためには、エコーで画像を描出してから構築するため、リアルタイムでは行えない。今後の課題であるが、研究の進捗は概ね予定通りである。
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今後の研究の推進方策 |
1)ソナゾイド の有効性 ソナゾイドの有効性に関する臨床研究を、倫理委員会の審査が得られ次第、開始する予定である。造影効果範囲はX線造影剤での広がりをコントロールとし、個体内比較する。また、ソナゾイド による有害事象の有無を検証する。 2)改良エンベロープ法 脊椎表面を強調する超音波画像モードの構築を行なっている。数人のボランティアによる脊椎の超音波描出を行い、アルゴリズムを検証している。さらにリアルタイムでの描出を行うために、改良が必要である。今後は、臨床使用を行い、患者要因による描出違いを検証し、よりクリアに椎弓間隙を描出できるように研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2-3月の学会がコロナウィルス感染拡大のため延期もしくは中止となった。また、ソナゾイド の臨床研究は2020年度から開催されるため、臨床研究に必要な物品は2020年度に購入することとした。
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