オートファジーは自食作用と呼ばれ、細胞内タンパク分解機構であり、不要なタンパク質やダメージを受けた器官を除去して細胞を正常に保つ働きも行っており、虚血再潅流時にオートファジーの誘導が心筋に対し保護的に作用することが示唆されている。 Sirt遺伝子はサーチュインsirtuin遺伝子とも呼ばれ、クラスIIIヒストン脱アセチル化酵素であり、遺伝子の転写制御において重要な役割をはたしていることで知られている。さらに、近年の研究によると心機能の制御や虚血に対する心筋耐性をコントロールする作用についても報告されている。 また、短時間の虚血再灌流がその後の長時間の虚血に対する心筋梗塞サイズを減少させるという報告があるが、近年、吸入麻酔薬、オピオイドやアデノシンなども同様のメカニズムで心筋保護作用があると考えられている。そこで、この心筋保護作用にSirtやオートファジーがどのように関与しているかを調べた。 マウスを人工呼吸下に開胸、血行動態を測定しながら、心臓冠動脈を30分間閉塞した後に行なった。その後、2時間再潅流し、再び冠動脈を閉塞、Evans Blueを注入し心臓を取り出した。心臓をスライスし、TTCにて再染色を行い心筋梗塞サイズを測定した。また、Sirtの誘導剤であるresveratrol、Sirtの阻害剤であるnicotinamideを吸入麻酔薬刺激前に投与し、同様の虚血再潅流実験を行った。その結果、吸入麻酔薬の心筋保護作用は、サーチュインの誘導剤によって相加的に引き起こされた。また、吸入麻酔薬の心筋保護作用はサーチュインの阻害薬によって棄却された。このことから、吸入麻酔薬の心筋保護作用はサーチュインの心筋保護作用と同じ経路が関与している可能性が示唆された。
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