研究課題/領域番号 |
19K18245
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
箕田 直治 徳島大学, 病院, 特任助教 (30710644)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | POCD / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
術後認知機能障害(POCD)は麻酔・手術後に発生する認知機能低下で、特に高齢者に多く発生し長期的な生活の質の低下、就労困難、死亡率増加につながるため重要視されている。POCDの病態機序として脳内炎症が注目されているが、酸化ストレスは脳内炎症を増悪させる。本研究では、酸化ストレスの程度を簡単な血液検査で測定しPOCD発症を予見できないか、また酸化ストレスを軽減する薬剤を投与することで発症を予防できないかを調査する。 ①d-ROMsテストで酸化ストレスを、BAPテストで抗酸化力をそれぞれ定量評価し、POCD発症の独立危険因子もしくは早期診断のためのバイオマーカーになりうるかを調査する。POCD発症危険因子として過去に報告されているのは高齢、低学歴、認知機能低下、アルコール摂取、脳血管疾患の既往などであり、質的評価が主であった。本研究では酸化ストレスという視点から定量評価を行う。 ②抗酸化物質を周術期に投与することでPOCD発症が抑制されるという仮説を検証する。抗酸化物質投与で周術期酸化ストレスを軽減することにより、POCD発症を予防できないかを調査する。 60歳以上で全身麻酔下に手術を受ける患者を対象とし、書面による同意を得たうえで無作為に以下の2群に分ける。麻酔方法など周術期管理法は統一したプロトコールを適応する。 ①抗酸化群:周術期に抗酸化物質を投与する。②Control群:従来の周術期管理を行う。 両群で周術期に採血してd-ROMsテストとBAPテストでそれぞれ酸化ストレスと抗酸化力を定量評価し、POCD発症との関連性を検討する。また、両群間でPOCD発症率の違いを検定し、抗酸化物質による酸化ストレス抑制効果とPOCD予防効果を検証する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
d-ROMsテストとBAPテストの測定値がPOCD発症の独立危険因子もしくは早期診断のためのバイオマーカーとして有用であることを確認する作業を行っているが、新型コロナウイルス流行による手術件数減少や院内移動制限などの影響もあり、予定していた対象患者数の確保に難渋しており、データ収集が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
手術件数減少など対象患者数確保が難しい状況ではあるが、まずはd-ROMsテストならびにBAPテストの測定値とPOCD発症との関連性を検証することを目指して、引き続き研究計画通りにデータ収集を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
【理由】新型コロナウイルス流行による手術件数減少や病棟移動制限などの影響で研究対象患者数の確保に難渋しており、当初の計画より進捗状況が遅延している。その結果、測定試薬等の購入費が予定額を大幅に下回り、本年度の使用額が少なかった。 【使用計画】対象患者数が回復してくることを見込んだうえで、次年度分と合わせて測定試薬やデータ分析用のコンピュータ購入、学会出席のための旅費などにあてることを予定しており、引き続き研究を継続するために使用する。
|