研究課題
本研究の目的のひとつめである「術後24時間以内の重篤な有害事象の発生状況の把握と解析」に関してはさらに研究を進めることができた。本邦のデータを解析した得られた以下の結果を学術集会(第48回日本集中治療医学会学術集会)で発表し,査読付きの英文誌(Journal of Anesthesia誌)に2編発表した。①日本の小児病院ではPACUを有する施設数がこの4年間で増えていること。主に,呼吸,痛み,意識の評価のためにPACUは必要性を感じられていること。必要だと感じていても場所や人手がなくてPACUを開設できないでいる施設があること。(詳細は前年度の本概要で説明済み)②データベースから解析した術後24時間以内の院内迅速対応システムの起動と介入に以下の3つの特色があること。1.外科系医師と連絡が取れない場合のバックアップ体制として院内迅速対応システムが機能していることから,主治医制の文化がある日本では術後管理体制づくりは特に重要であること。2.スタッフの懸念が理由の院内迅速対応システム起動と特に治療を要しなかった院内迅速対応システム起動が稀であったことから,患者はすでに明らかに状態が悪かったことが示唆され,術直後は病態悪化の進行が速いこと。3.PACUを運営する施設であればPACUで対応することが多い麻酔効果残存や術後出血も,院内迅速対応システムで対応している施設があること。本研究の目的のふたつめである「術後の重篤な有害事象を減少させるための対策としてのPACU開設の有用性検証」に関しては,その方法を検討しなおすことになった。
2: おおむね順調に進展している
文書ベースでの予備調査で状況を把握できたため,オンラインデータ登録システムの構築の必要性を検討しなおしているため。本研究から発生する研究会である「日本のPACUを考える会」の概要は決定したものの,web会合は未開催であり,ホームページ作成予定だが業者の選定が済んでいないため。
研究会を開催し,オンライン登録のデータベースを構築を進めるかどうか議論していく。術後管理の安全性を向上させる対策としてPACUは有用なのかどうかを検証するための研究デザインを再検討する。
当該年度に計画していたオンラインデータ登録システムの構築が来年度へ持ち越されたことや,新型コロナウイルス感染症流行のため学術集会参加の機会が減少したため,次年度使用額が生じた。次年度には,オンラインデータ登録システムあるいはそれに代わるシステムを構築するのに助成金を使用する。また,関連する学術集会での発信を積極的に検討する。
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Journal of Anesthesia
巻: 35 ページ: 222-231
10.1007/s00540-021-02900-4
巻: 35 ページ: 321
10.1007/s00540-020-02891-8
日本臨床麻酔学会誌
巻: 40 ページ: 453-458