研究課題/領域番号 |
19K18252
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
寅丸 智子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70594612)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 低酸素応答機構 / 複合性局所疼痛症候群 (CRPS) / 自律神経障害 / 慢性疼痛 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞内酸素濃度センサーであるプロリン水酸化酵素 (Prolyl Hxdroxylase Domain: PHD) に着目し、臨床的に重要な種々の病的疼痛の重症化・慢性化との関係性を明らかにする事である。 野生型マウスにPHD阻害薬を投与し、投与開始後3週間で手術後痛モデルを作成した。さらにPHD阻害薬を3週間投与し、その間、Von Frey試験で機械過敏性、ホットコールドプレートで冷覚過敏性、Dynamic weight bearingで自発痛の変化を検証した。手術後3週間で足底組織を採取し種々のマーカーを用いて蛍光免疫染色を行った。 PHD阻害の手術後痛への影響は認められなかった。PHD2は後根神経節の大径線維にて発現が認められていたため、振動覚・位置覚への影響も検証する必要があると考えた。また、冷覚過敏性についてはホットコールドプレートで最初の疼痛様行動までの潜時を検証したが、一定時間内の疼痛様行動の回数を数えるという方法の報告もあり、組み合わせる必要があると考えた。 PHD阻害薬投与下Brennanモデル作成3週間後の創部神経束で神経発芽、創部汗腺でノルアドレナリン作動性交感神経の発芽が認められた。創部汗腺における交感神経の異常発芽は手術後に発症するCRPSでの病理像に類するものであり、PHD阻害がCRPSにおける局所自律神経障害の発症に関与する可能性が考えられた。低酸素応答機構を局所制御することで難治性であるCRPSの治療標的となりうる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの手術後痛モデルにPHD阻害薬を投与し、手術後痛への影響を検証した。さらに、同モデルの足底組織における蛍光免疫染色を行った。
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今後の研究の推進方策 |
末梢神経、後根神経節、脊髄における低酸素応答関連分子の発現パターンの検証。マウス手術後痛モデルにおけるPHD阻害後の振動覚・位置覚への影響の検証。マウス手術後痛モデルにおけるPHD阻害後の創部発汗への影響および創部局所の低酸素応答阻害によるCRPS予防効果の検証。
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