我々の研究チームは以前の研究課題より、内因性NMDA受容体作動物質のキヌレン酸およびキノリン酸の神経障害性痛に対する効果を検証してきた。今回は痛みが慢性化する機序の解明を目指し、運動療法の鎮痛効果に対するキヌレン酸・キノリン酸の役割を検証するために以下の知見を得た。 1.神経障害性痛に対して、キヌレン酸の300 mg/kg投与群は,神経障害性痛に起因する行動様式(体重負荷測定機器を用いた、マウスの両下肢の荷重の変化を測定)の荷重比および接地面積比が非投与群に比べ改善した.一方で、NMDA 受容体のアゴニスト作用をもつキノリン酸は,その作用から痛みが増強することが予想されたが、神経障害性痛に起因する行動様式の改善も増悪も認めなかった。2.キノリン酸は、うつ症状に関係すると思われる体重減少を引き起こした。キノリン酸は慢性疲労やうつ病との関連が示唆されており、さらなる検証が必要とされた。3.既存の報告の追試で、神経障害性痛に対して運動療法は、鎮痛効果を認めた。4.運動療法の強度の検討に難渋している。運動強度が高い場合、運動ストレスからうつ症状を誘発し、痛みを増強する可能性もあり、強制水泳テストと砂糖水消費テスト等のうつ症状の評価を予定していたが、下記の理由から実験が中断した。 実験が中断した理由:2020年からのコロナの影響により、臨床業務に多くの時間が費やされた。また、代表者の勤務が2022年から非常勤に変更になり、研究に割くエフォートの割合が著しく低下し、研究の継続が困難となった。
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