研究実績の概要 |
プロポフォール注入症候群(propofol infusion syndrome, PRIS)の病態の分子機序の解明は麻酔科学の大きな課題の一つである。本研究ではこの成果を基礎として,様々なミトコンドリアDNA変異を持つtransmitochondrial cybrids細胞を用いまたミトコンドリア蛋白質の発現を遺伝子操作で制御するなどの手法を駆使してプロポフォールの標的蛋白質の同定することが本研究の主たる目的であった。この目的の達成のために研究初年度に以下の検討を行った。 細胞外フラックスアナライザーと神経由来の細胞株を用いて細胞の酸素代謝、ブドウ糖代謝をアッセイする実験系を確立した。この実験系を用いてミトコンドリア電子伝達系の各複合体活性にプロポフォールが及ぼす影響を検討した。ポジティブコントロールとして各複合体特異的な阻害薬を用いた。この結果プロポフォールは複合体I, II, IIIに依存した酸素消費を抑制するが複合体IV依存の酸素消費には影響を与えないことが判明した。さらにこの観察事実はミトコンドリアDNA変異を持つtransmitochondrial cybrids細胞を用いた実験でも確認できた。さらに細胞内のATP動態を細胞質、核、ミトコンドリアなどの各コンパートメント別に可視化と共に明らかにする目的で生細胞内のATP濃度をリアルタイムに可視化できる蛍光プローブ ATeamを構成的に発現する細胞株を樹立した。
|