ガバペンチン(GBP)の下行性疼痛抑制系のセロトニン経路に対する影響を検討するために、前年度から継続して神経障害性疼痛モデル(SNLモデル)ラットを用いて行動実験と免疫組織学的実験を実施した。 SNLモデルラットに対してGBP100mg/kgを腹腔内投与し、さらにセロトニン受容体拮抗薬30μgを脊髄くも膜下腔投与した実験の対照実験として、SNLモデルラットにセロトニン受容体拮抗薬30μgのみを投与した際の疼痛閾値の変化を、足底刺激の逃避行動を調べることで検討した。オンダンセトロン、ケタンセリンを単独で投与しても、投与後180分までのSNLモデルラットの疼痛閾値に変化は見られなかった。 免疫組織学的実験は、naiveラット、SNLモデルラット、それぞれにGBPを投与したラットの脊髄後角を5-HTで染色した後、染色結果をBZ-H4C analyzer software(Keyence社製)のハイブリッドセルカウント機能を使用して解析した。SNLモデルラットはnaiveラットと比較して5-HTが増加していた。しかし、SNLモデルラットにGBPを投与しても脊髄後角における5-HTの発現には有意な変化はなかった。一方免疫組織においてGBP投与により脊髄の中心管付近の5-HTが増加する傾向が認められた。 これまでの検討により、GBPは下行性疼痛抑制系のセロトニン経路に影響を与える可能性が示唆されたが、GBPによる下行性抑制系の促進はノルアドレナリン経路で起こり、セロトニン経路の活性化は二次的効果である可能性が考えられた。
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