本研究では、糖尿病薬であるMetforminの敗血症モデルにおける蛋白代謝に及ぼす影響を検討するため、マウス由来筋芽細胞株C2C12細胞を用いてin vitro実験を行った。Metforminの影響を検討するため、RT-PCRを用いて標的遺伝子のmRNA発現量を解析した。 0.5-5mMのMetforminを投与し、ユビキチンプロテアソーム経路の代表的筋萎縮原因遺伝子であるAtrogin-1とMuRFのmRNA発現量を解析した。Metformin (5mM) はAtrogin-1、MuRFの発現量を増加させた。また、Metformin はAtrogin-1などの筋萎縮原因遺伝子の転写活性を誘導させるMyostatinの発現量も増加させた。次に、ユビキチンプロテアソーム経路を介した蛋白分解亢進の機序として、炎症性サイトカインの発現量を検討した。Metforminは、炎症性サイトカインであるIL-6とTNF-α mRNA発現量を増加させた。細胞内代謝に重要な役割を果たすHIF-1は炎症下に活性化するが、HIF-1支配遺伝子であるVEGFとREDD-1 mRNA発現量はMetforminにより増加していた。これらの結果から、Metforminが蛋白分解を亢進させ、その機序として炎症性サイトカインの産生増加やHIF-1の活性化が関与することが考えられた。 敗血症モデルとして、Lipopolysaccharide (LPS) 投与下で検討を行ったが、LPS投与下でもMetforminは炎症性サイトカイン発現をさらに増加させ、蛋白分解亢進を抑制することはなかった。一方で、酸化ストレスとして、H2O2投与下で行った検討では、HIF-1支配遺伝子であるREDD-1やAtrogin-1とMuRFの発現量はH2O2投与により増加するが、Metforminはその発現増加を抑制した。
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