褐色脂肪細胞及びベージュ細胞は脱共役蛋白1の発現を介して熱を産生してエネルギー消費量の調節に関与している。ヒト成人では褐色脂肪組織は主にベージュ細胞で構成されており、肩甲骨間、腎周囲、鎖骨上窩部、腋窩部、傍脊椎部などに存在している。本研究は、当初は主に脊椎の手術を受ける患者を対象とし、脂肪組織の採取、体温の測定を同時に行い、褐色脂肪組織の個人差と周術期の体温の変動に相関があるかを調べるものであった。 研究の開始に当たり、新型コロナの流行が同時期に発生し、臨床業務の内容、形態が大きく変わってしまった。そのため研究のための時間を確保するのが困難となり、着手が大幅に遅れてしまった。 また実際に当初考えていた方法での脂肪組織の採取、標本、染色、顕微鏡による観察といった操作が講座内の環境的に困難となり、方法を変更することにした。褐色脂肪組織はFDG-PETで検出することが可能であることが判明しており、手術中に採取せずとも、手術前検査にFDG-PETを施行済みであればある程度存在を推測することができると考えた。FDG-PETの結果から褐色細胞組織の多寡につき評価したうえで、手術中の体温の推移を観測することでも褐色脂肪組織の個人差による体温への影響が調べられると考えた。褐色細胞の評価が手術時と時期が異なってしまう点、また術中の寒冷刺激が加えられていない点などが当初の計画と比較すると制限されてしまうものの、手術前に評価可能な因子という点で有益であると考えられる。現在調査を継続中である。
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