小児の上気道は狭く、炎症によって浮腫みやすく、機能的残気量が少ないため、気道は閉塞しやすい状態にある。それに加え、小児特有の先天性奇形症候群により換気・挿管困難の確率が成人と比較して高い。近年、小児の困難気道に対する対策は始まったばかりである。マスクによる換気ができなくなった場合の最終手段が、輪状甲状間膜穿刺や気管切開である。しかし、乳幼児・小児における輪状甲状間膜穿刺の成功率は限りなく 0 に近い。大切な命を守るため、現在様々な医療モデルが開発され安全性を向上させている。しかし、臨床に即した各年代の小児の輪状甲状間膜穿刺モデルは存在しない。この研究の目的は、緊急時の安全性を高め救うことができる大切な命を合併症なく救うため、各年代の小児の実際のデータをもとにモデルを作成を行うことである。 今回のこの研究により、bispectral index(BIS)モニターにより十分な麻酔深度であることを確認し安全性を担保したうえで、臨床の現状に近い小児の輪状甲状間膜穿刺モデル作成に一歩前進することができた。超音波画像装置(ホッケスティック型プローベ)による一定の圧を付加することで偏移する様子から、一定の圧を付加した際に、輪状甲状軟骨の部位が偏移するモデルが作成できた。軟部組織による輪状甲状間膜までの距離、気管径などを鑑み、さらなる年代別のモデル作成に向かう。また、皮膚粘弾性測定装置Cutometerにより皮膚の弾性の測定も可能となり、その値も加味したモデルの作成が今後の課題となってくる。
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