現在、日本における死因の1位は悪性腫瘍である。多くのがん患者は痛みを経験するため、がん性疼痛コントロールはQOLの向上につながる。がんはしばしば骨転移し、局所に炎症を惹起させるだけでなく、腫瘍細胞自体を増殖する。骨転移による痛みは侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛が複雑に関わるため、疼痛コントロールは困難と考えられている。キマーゼは組織線維化、血管新生促進および血管リモデリングに作用し、心血管、各臓器の線維化に関する研究が進められているが、痛みに関しての報告はない。本研究では、マウスがん性疼痛モデルを作成し、キマーゼ阻害薬であるTY51469を用いて疼痛効果の検証を行う。キマーゼが疼痛に関与するかを検証した点に学術的独自性があり、組織線維化、血管新生とがん性疼痛の関係に着目した点に創造性がある。がん性疼痛発現機序の解明を目的とし、がん患者のQOLの向上につながることに期待できる。 前年度はがん性痛モデルで鎮痛効果を検証することができなかった。さらに生存率を経日追跡したが、TY51469による生存率への影響、腫瘍増生抑制効果を示すことができなかった。今年度はCFAをC57/B6マウスの右足底に注入し、炎症性痛モデルを作成した。炎症性疼痛の経日変化は体重負荷試験装置(Dynamic WeightBearing:DWB、Bioseb社製)で測定した。炎症性疼痛に経日変化は認められず、TY51469による鎮痛効果を立証することはできなかった。
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