研究課題/領域番号 |
19K18291
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小西 裕子 名古屋大学, 医学系研究科, 特任講師 (60771970)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | セボフルラン / がん細胞 |
研究実績の概要 |
国際的にがんの外科手術後の癌の再発や浸潤に、麻酔薬の影響が存在するかどうかについて、前向き検討や後ろ向きコホート研究が進められている。現在までにこれらの結果では臨床濃度の吸入麻酔薬による再発懸念が疑われている。しかし各国の麻酔プロトコールの違いや原発がんの違いもあり未だ明らかな結論は得られていない。一方でこの機序解明のための基礎研究も実施され、一部の麻酔薬が低酸素環境を引き起こしがん細胞の細胞死を抑制するという報告もある。しかし動物実験や培養細胞を用いて検討が進められているが、用いるサンプル数が少なく基礎データの蓄積が望まれている。 また近年ではがん患者への外科的切除手術数は増加しているが、術後の分子標的薬を用いたがん治療も盛んに実施されている。こうした背景のもと消化器がんの分子治療薬を適用する前に、複数の減癌遺伝子の変異の有無を検査する遺伝子治療は保険適用となるなど広く実施されている。時には術前にこうした変異の有無がすでに明らかになっている場合もある。 そこで本研究ではこの原がん遺伝子RASに着目し、麻酔薬後に生じる増殖能の変化と変異の有無との関連を明らかにすることを目的とした。これまでに研究代表者は広く汎用されている吸入麻酔薬の一つセボフルランに暴露した多様なヒトがん細胞株が、その増殖能を高めたことを報告した。そこで原がん遺伝子KRASの変異の有無に着目し複数のヒト大腸がん細胞株についてセボフルラン暴露後の増殖能を検討し、2種類ずつの細胞株が変異の有無により増殖能に違いが生じることを同定した。また細胞ライセートによる細胞分裂因子タンパク質の増加、血管新生遺伝子の発現増などを同定した。さらにこれらについて一部阻害剤を用いて増殖能に差が生じるかどうかを検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
推測した一部の活性化経路について、その阻害剤による増殖能の違いを比較するに当たり予測と異なる結果を得られた。そのため別の遺伝子にも着目しその検討を行っているため。また実験に必要な実験機器が老朽化により故障をしたためその修理と入れ替えによって進捗に後れをきたした。
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今後の研究の推進方策 |
注目した遺伝子KRAS変異の有無とセボフルラン暴露後の増殖能の違いについて、12種類の細胞株を検討したところ、2種類についてその違いを得ることが判明した。しかし予測した経路とはまた異なる経路が活性化していることから、複数の阻害剤と遺伝子発現を検討していく必要がある。その上でマイクロアレイによる検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験器具の老朽化と故障により実験進捗に後れを生じたため、消耗品などの消費量が減少した。また新型コロナウィルスによる学会発表取りやめなどがあり旅費などの支出が生じなかった。来年度はマイクロアレイの受託解析を実施を計画している。
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