研究課題/領域番号 |
19K18297
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
黒田 浩佐 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (50624409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高ヒスチジン糖タンパク / HRG / 術後合併症 / バイオマーカー / ELISA |
研究実績の概要 |
我々は、高ヒスチジン糖タンパクHistidine-Rich Glycoprotein (HRG)に注目している。本研究では、大きな侵襲があった際のHRG値の変動を追及している。すなわち、さまざまな手術を受ける患者を対象とし、HRG値の周術期における変動を調べることが目的であり、術後合併症発症の有無によって術後のHRG値に差があるかどうかを検討する。 令和3年度は、令和2年度に実施した臨床研究のデータ確定、解析、結果考察を進め、学会発表や論文作成などによる結果公表を予定していた。 結果の要旨は以下の通り。令和2年9月より岡山大学病院での臨床研究を開始し、9月17日から11月11日の期間に患者163名から同意が得られ、最終的に150例分の血液検体を採取保存した。150例のうち60例(40%)において、Clavien-Dindo分類におけるGradeII以上の術後合併症を生じていた。主評価項目であるHRG値は、合併症群では非合併症群に比べて有意に低値であった[中央値21.5 (四分位範囲18.12 - 25.74) vs 25.46 (21.05 - 31.63) μg/mL, p<0.001]。既存のバイオマーカーであるCRPやプロカルシトニンにおいても両群に有意差を認めた。Cox比例ハザードモデルでは、HRG値と合併症の有無に有意な関連を認めた[Hazard Ratio 0.92 (95%CI 0.88 - 0.96)]。ROC曲線分析では、HRGによる術後合併症の予測能力は、AUC 0.69であった。以上の結果より、HRGは術後合併症予測因子として活用できる可能性があると考えられる。この結果は、第34回欧州集中治療学会(ESICM、2021年)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の研究計画では、令和元年度前半で、研究プロトコルの作成、倫理委員会承認などを経て研究開始し、後半で実際に患者検体の収集を開始する予定であった。しかし、本研究開始後に、主評価項目であるHRG値の測定に関して大きな問題が生じた。具体的には、測定法として自家製ELISA法を用いているが、その肝であるQiagen社のNi-NTA HRP Conjugateという製品が生産中止となってしまい、令和元年夏には入手困難となった。代替品としてThermo社のHisProbeを用いたが、安定した測定が可能となるまでに改良を要し、令和元年度末に測定法の改訂が完了した。 令和2年度には、当初の計画よりもほぼ1年遅れる形で、臨床研究を進めた。令和2年8月14日付で岡山大学病院倫理委員会の承認が得られ(承認番号:研2007-006)、令和2年9月より岡山大学病院での臨床研究を開始した。9月17日から11月11日の期間に患者163名から同意が得られ、最終的に150例分の血液検体を採取保存した。その後、主評価項目であるHRG値を測定するとともに、その他のデータ収集を行った。 令和3年度には、データ解析、結果考察を進めた。主評価項目であるHRG値は、合併症群では非合併症群に比べて有意に低値であり、HRG値と合併症の有無に有意な関連を認めた。結果より、HRGは術後合併症予測因子として活用できる可能性があると考えられた。以上の結果を第34回欧州集中治療学会(2021年)にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度より臨床研究を開始し、令和3年度に主要な結果解析を終え、その内容について国際学会発表を行った。令和4年度は、結果の吟味を続け、追加のデータ収集、追加実験の必要性について検討する。並行して論文作成を進め、投稿を行い、令和4年度内での論文掲載を目指す。 また、研究推進のため、研究協力者や岡山大学麻酔科蘇生科の臨床研究コーディネータと適宜会議を行い、情報共有、方針決定、進捗状況の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が、当初計画より遅れ、臨床研究の実施が1年先送りとなったことから諸費用の持越しが発生している。また、コロナ禍において、日本国内学会、国際学会が中止やWEB開催となったことで、情報収集のための学会参加は見合わせており、旅費が持ち越しになっている。 令和4年度には、学会発表のための旅費のほか、論文作成のための統計解析の相談費用、英文校正費用、論文投稿費用に用いる計画である。また、適宜必要に応じて追加実験や追加の検査外注を行っていく。
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