外傷性脳損傷(TBI)は不可逆的な高次脳機能障害を引き起こす。また、術前より認知機能障害を伴う場合、周術期認知機能障害(PND)が重症化する。近年、単球由来マクロファージ(MDM)が認知機能障害に関わる重要な因子であり、デクスメデトミジン(DEX)がMDMの遊走に関与し神経保護作用を有することが明らかとなってきた。今回TBIモデルマウスを用い、全身麻酔時DEXの投与がPNDを軽減するという仮説を証明する。 【方法】C57BL/6マウスを開頭し、インパクターを用いTBIモデルを作成した。受傷28日後、全身麻酔としてイソフルラン1.5%30分投与した。DEXは吸入麻酔薬投与30分前に50μg/kg腹腔内投与した。Naive群(全身麻酔のみ)、Sham群(開頭手術+全身麻酔)、TBI群(TBI+全身麻酔)、TBI-DEX群(TBI+デクスメデトミジン+全身麻酔)に割り付けた(各群n=12)。全身麻酔投与14日後、バーンズ迷路試験を用い、周術期認知機能障害を評価した。MDMの集積は免疫組織学的解析により評価した。 【結果】バーンズ迷路試験で、全身麻酔のみと比較しTBI群(TBI+全身麻酔)は認知機能低下が認められた。一方、TBI-DEX群(TBI+デクスメデトミジン+全身麻酔)はNaive群、Sham群と有意差がなく、認知機能が維持された。免疫組織学的解析により、TBI群は海馬のMDMの発現が優位に増加し、TBI-DEX群はNaive群、Sham群と比較し発現量に有意差がなかった。 【結語】TBIモデルマウスにおいて、DEXは海馬でのMDM発現を抑制しPNDを軽減する可能性が示唆された。
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