研究課題/領域番号 |
19K18308
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
里元 麻衣子 東邦大学, 医学部, 准教授 (10611551)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | せん妄 / 心電図 / 予測 / 生理機能 |
研究実績の概要 |
術後せん妄を減らし、患者さんの苦痛を少しでも減らしたいと考え、このプロジェクトを立ち上げた。術後せん妄になると、ICU滞在や入院期間が増加するため、入院費が31%増額となり退院後施設入所や死亡率が上昇することで患者自身のQOLが下がり、退院から1年間に追加で6万ドルのヘルスケアコストがかかるといわれている。世界の先進諸国が高齢化社会を迎え、健康な長寿社会の実現を目指すのと同時に、かつては対象とならなかった高齢患者に対する外科手術療法が広く普及しつつある。 しかしながら、一見健康的にみえる高齢者も、入院という劇的な生活環境の変化、さらには意識を完全に消失する全身麻酔下での手術を施行される結果、精神・心理的に大きな変調を来たす可能性が高い。なかでも、せん妄と呼ばれる混乱した状態は、治療に非協力的かつ攻撃的な言動と結びついて、患者自身の生命をも脅かすほか、ひとたびせん妄を生じた患者は無事に退院した後も活動性の低下、予後不良の転帰を辿ることが近年の疫学調査で明らかとなってきた。 我々は、当該研究費を取得し研究を続ける中で、国内外の教育講演を2つ、国内の学会発表を3つ、そのうち2つは学会で優秀演題と評された。海外の国際学会で口頭の発表を3つ発表してきた実績がある。具体的には、65歳以上の予定心臓手術患者の術後せん妄を生理学的指標(心拍変動や瞳孔計)で予測できると仮説を立て、研究を進めた。2020年度は目標患者数の8割程度達成し、中間解析では他施設で小規模の研究で得た結果と同様に副交感神経を反映するといわれるHFがせん妄患者で優位に低下しているという結果を得た。 高齢者の外科的手術心電図や脳波、瞳孔など比較的侵襲が低く得られる生体情報から患者の状態をいち早く予測し、今後の治療に知見をあたえることで、個々の患者へのオーダーメイド治療が行えると確信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属施設の倫理委員会取得後、心臓手術患者の術前心電図を取得し、術後のせん妄との関連性についてデータを取得している。近年カテーテル治療など小侵襲の心臓手術が増え、患者のエントリーが減少傾向ではあるが、ほぼ予定患者のデータを取得できたため今後データの解析と論文化のためのまとめを始めている
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今後の研究の推進方策 |
今までと同様に、患者さんの同意取得後こつこつデータの取得を行う。データをまとめたのちせん妄発症群と非発症群それぞれの自律神経機能、脳波を因子分析の上クラスター因子分析し、せん妄発症の程度を正確に予測し得る計算式を得る。国内外の研究者と広く交流し、ホームページや論文、国際学会での発表を通じて研究成果を世に広く伝える。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会に参加するため予算を計上していたが、コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっており、学会は中止や延期もしくはWEB参加となったため、その分の予算が翌年度に持ち越しとなった。 2021年度は国際学会に参加できるようであれば開催現地へ行きたいと考えているが、学会旅費以外にもオープンジャーナルの掲載費用など本研究を広く世の中に広めるための予算に使用したいと考えている。
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