研究課題
敗血症における免疫系の調節異常は、敗血症性肺傷害を含む多臓器不全の病態形成に中心的な役割を果たしています。2型自然リンパ球(ILC2)は、肺の免疫恒常性を制御する新たなプレーヤーだが、敗血症におけるILC2の役割はまだ十分に理解されていません。本研究では、盲腸結紮穿刺(CLP)による敗血症を誘導したマウスを用いて、肺におけるILC2の活性系および抑制系受容体の発現と細胞内2型サイトカイン産生能の経時的変化を調べました。その結果、敗血症マウスの肺では、遊走性のinflammatory ILC2ではなく、常駐性のnatural ILC2を主成分とするILC2sによるIL-13産生が1日目に減少し、7日目までに徐々に回復することがわかりました。IL-13産生能低下の制御メカニズムを解析するため、まずILC2の活性化シグナル受容体であるST2とICOSの発現強度を測定しました。するとCLP24時間後に発現は上昇しており、ILC2においてCLP24時間後にIL-13産生能が抑制されている、という先ほどの結果と矛盾する反応でした。 そこで抑制系受容体であるPD-1の発現を解析すると、コントロールに比べ有意に上昇しており、ILC2におけるPD-1/PD-L1シグナルがIL-13発現低下に関与していることが示唆されました。さらに、IL-33ノックアウトマウスを用いて、IL-33がIL-13を産生するILC2の能力を調節していることを明らかにしました。また、IL-33が敗血症肺におけるST2とPD-1の発現およびシグナル伝達の調節を介している可能性も考えられました。今回の研究成果は、ILC2の免疫学的メカニズムの理解を深めるとともに、敗血症による急性肺傷害に対する新たな治療法の開発に寄与する可能性があります。
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