最終年度は集中治療部においてモニターされる心電図波形を用いて、1次元畳み込みニューラルネットワークを基に心電図異常の予測を行い、さらにその根拠とする波形を提示するシステムを開発した。さらに、この予測と根拠の不確実性を定量し解釈を可能とする手法を開発し、例えば心筋梗塞が予測された波形データについて、根拠のピークが2つ得られた際にそのどちらがより確度が高いかを提示することを可能とした。機械学習のモデルのより詳細な理解を可能とする成果として、国際学会で発表した。このシステムは1次元の検査・波形データだけでなく、胸部レントゲン画像といった医用画像の予測問題にも応用可能であり、今後研究を展開していく。研究期間全体を通じて、集中治療部における急性腎障害の発症予測とその根拠可視化の研究に主に取り組み、その成果を国際学会で発表し論文化した。さらに、機械学習を用いて腎病理画像の所見を教師なしで定量化する手法開発と、手法の実際の臨床データにおける評価を行う研究にも取り組み、論文発表した。その他、構築した環境を基にオミクスデータにおける機械学習の応用に関する研究にも取り組んだ。このような検査データや画像、さらにオミクスデータといった複数のモダリティを統合することで、より正確な疾患・アウトカム予測が可能なモデルの開発や、これらモデルの予測根拠を解釈することで分子生物学的な病態の理解を可能とする研究に今後発展させていく。
|