敗血症などの重度侵襲病態では、過剰炎症・免疫異常により生体機能の恒常性が破綻する。病態進展の初期段階でいかに全身炎症を制御するか、その機序の解明が求められている。本機序において、自立神経系が免疫炎症反応を制御するメカニズム:コリン作動性抗炎症経路が注目されている。同経路は多くの動物実験で実証されてきたが、実臨床の重度侵襲病態を呈した患者におけるデータはほとんどない。デクスメデトミジンは集中治療室で頻用される鎮静薬で脳内のα2アドレナリン受容体に作用することで鎮痛・鎮静作用を持ち、抗炎症作用を持つ薬剤として注目されている。しかしながら、デクスメデトミジンの抗炎症作用の機序はまだ完全には明らかになっていない。本研究では、敗血症において、コリン作動性抗炎症経路の重要タンパクであるα7Ach受容体の評価をヒト検体を用いて行い、また、ヒト単球細胞株THP-1を用いて、デクスメデトミジンが抗炎症作用を持つという仮説を検証し、また、デクスメデトミジンの抗炎症作用とコリン作動性抗炎症経路(cholinergic anti-inflammatory pathway)との関連性について検討した。 結果、敗血症において①敗血症患者のヒトPBMCを用いた、qPCRを行い、α7Ach受容体のmRNA量を得た。②デクスメデトミジンがα7Ach受容体を介して抗炎症作用が持つことを示した。 今後の重度侵襲病態におけるコリン作動性抗炎症経路、α7Ach受容体の病態解明の一助となる可能性がある。
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