研究目的の一つである敗血症でのDAMPs蛋白の血中濃度の推移に関しては,ラット敗血症モデルでDAMPs蛋白の代表であるヒストン蛋白は経時的に上昇していることが示された.また,臓器傷害との関連ではヒストン蛋白濃度の上昇に伴い腎障害が生じることが病理組織学的所見から示された.次に,3種類のトロンボモジュリン(レクチン様ドメイン+EGF様ドメイン,レクチン様ドメイン,EGF様ドメイン)の投与とヒストン蛋白濃度と腎障害に及ぼす影響を検討したところ,レクチン様ドメイン+EGF様ドメイン,レクチン様ドメイン,EGF様ドメインそれぞれのトロンボモジュリンの投与でヒストン蛋白濃度の抑制と腎障害の軽減を認めた. 一方,24時間生存率を検討するため3種類のトロンボモジュリン(レクチン様ドメイン+EGF様ドメイン,レクチン様ドメイン,EGF様ドメイン)の投与群と非投与群で比較検討を行った結果,トロンボモジュリンの投与群では非投与群よりも生存率が延長するということが示された.特に,トロンボモジュリンのうち,レクチン様ドメイン+EGF様ドメイン,レクチン様ドメインの投与が非投与群との比較において有意に生存率を改善したという結果となった. 結果として,敗血症におけるヒストン蛋白の血中濃度の上昇と腎障害との関連性,そしてトロンボモジュリン(特にレクチン様ドメイン)のヒストン蛋白抑制効果と腎障害軽減効果について示唆された.
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