研究課題/領域番号 |
19K18335
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
大田原 正幸 杏林大学, 医学部, 助教 (70712537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 好中球 / マイクロ流路 / 熱傷 / 敗血症 / Endotoxin Activity Assay / 好中球遊走能 / DAMPs / PAMPs |
研究実績の概要 |
本年度は、杏林大学医学部救急医学教室の山口芳裕教授の協力の下、本学倫理委員会より研究承認が下りた10月末日より症例登録を開始した。本学付属病院高度救命救急センターへ救急搬送された重症熱傷患者を対象に、一般採血の残血を使用し好中球遊走能および活性度の測定を、救命センター搬送直後、初回デブリドマン術翌朝、そして初回自家皮膚移植術翌朝の3ポイントで行った。治療の都合上、一部の患者で3ポイント全てで測定を行うことが出来なかったが、重症熱傷計3例の症例登録を実施できた。集積された症例を用いて、WBCやCRP、プロカルシトニンやプレセプシンといった一般的な感染マーカー定量に加えて、マイクロ流路システム(Microfluidic device system ; MFD)を用いた好中球遊走能測定とEndotoxin Activity Assay(EAA)を用いた好中球由来の活性酸素量測定を実施し、重症熱傷患者の末梢血液中における好中球の活性化を解析した。 既存の感染マーカーについて、搬送直後は正常値であるものの、手術侵襲が加わることで感染の合併が起こらずとも上昇する傾向を認めた。MFDおよびEAAを用いて好中球機能測定を行ったところ、気道熱傷を合併している場合には搬送直後から好中球活性化が増強されていたが、手術侵襲では上昇を認めず、侵襲のみでは大きな変化を生じない傾向を認めた。すなわち、既存の感染マーカーは手術などの感染を伴わない侵襲で上昇を認める為、新規感染の合併を検出することは容易でないが、MFDやEAAを用いた好中球機能解析を行った場合、手術などの侵襲では大きな変化を起こさず、新規感染の発症をより鋭敏に検出できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の当該年度の研究の達成目標である、重症熱傷を対象としたマイクロ流路を用いた好中球の機能解析が新たな感染マーカーとして有用であるかを明らかにする研究に関して、好中球遊走能がマイクロ流路システム(MFD)を用いて正確に評価でき、またEndotoxin Activity Assay(EAA)を組み合わせることで、遊走能および活性酸素放出の両面から好中球機能解析ができ、好中球活性化を評価できることが分かり、更なる症例集積を進めている。よって本研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに達成してきた研究結果から、MFDおよびEAAを用いた好中球機能解析は既存の感染マーカーと比較して、非感染性の侵襲に大きな影響を受けず、重症熱傷のような過侵襲の状態で新規感染を早期に発見することが困難な病態においても有用な新規感染マーカーとなり得る可能性がある。今後は更なる症例集積を行うことで、実際に重症熱傷患者が二次的な感染を起こした場合にどのような変化を起こすかのデータ収集を行うことで、仮説の裏付けがなされるかを評価する。更には、現在数時間を要するMFDを用いた好中球遊走能測定を、より短時間で簡便化できるよう洗練していく方策である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初回セットアップの為、物品費が見積もりより多く要し前倒し請求したが、次年度使用額(110,736円)分は使用せず翌年へ繰り越しとなった。翌年度の助成金については、研究遂行に必要な消耗品やソフトウエアの購入が主な使用用途となる見込みである。
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