敗血症、外傷、大手術など高度侵襲に続発する臓器障害の進展には、活性化顆粒球が深く関与している。これら活性化顆粒球が深く関わる病態に対する新しい治療法として、われわれは、活性化顆粒球の標的の場を生体外に設け、過剰な炎症反応を生体外に移動させることで臓器障害を阻止できないかと考えた。この「逆転の発想」の新システムは、血液浄化回路内に組み込まれた、活性化顆粒球捕捉のための一次カラムとして、捕捉時に放出されるメディエータを除去するための二次カラムからなる。一次カラムとして、酢酸セルロース製の吸着担体が充填された体外循環用カラムで、直接血液灌流法により末梢血中の顆粒球・単球を選択的に吸着除去(selective granulocyte and monocyte/macrophage apheresis system (GMA))する医療機器(アダカラム)を使用し、二次カラムとしてメディエータ吸着膜であるPMMAを用いた。これまでに、ブタ新鮮血を用いたex vivo の研究、生体ブタを用いたin vivoの研究を行い基礎的な結果を報告している。本研究の目的は、このデバイスを臨床応用し、敗血症の治療として確立することである。 本研究においては、潰瘍性大腸炎を持つ患者1名の2度にわたる敗血症によるICU入室に対して2サイクル、アダカラムを使用した。結果として、白血球数は著明に減少することがなかった。一方で貪食能は緩やかな低下を認めた。また、CD11bの発現の有無で評価した接着能は緩やかな低下を認めた。以上のことから、敗血症に対するアダカラムの臨床使用は白血球数を著明に減少させることなく、過剰に活性化した顆粒球を取り除くことができる可能性が示唆された。
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