研究課題/領域番号 |
19K18355
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
形見 祐人 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (50791224)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 精巣 / 精巣捻転 / 虚血再灌流障害 / 血液精巣関門 / 希少糖 |
研究実績の概要 |
精巣捻転症は、思春期男児に好発する救急疾患であり、可及的速やかに手術により捻転を解除して血流を回復させ、精巣を温存することが第一の治療であるが、手術により温存した精巣に生じる再灌流障害も問題視されている。術後の精巣萎縮や精子形成機能障害の可能性が指摘されているが、精巣の虚血再灌流障害に対する治療戦略は未だ確立されていない。本研究の目的は、精巣の虚血再灌流障害に対する新たな治療法開発のため、希少糖D-アロースの保護的効果を検証することである。 ヒトにおける精巣捻転の好発年齢である思春期に相当する8週齢のSDラットを使用し、左精巣を720℃捻転させて虚血負荷を与えたのち、捻転を解除して再灌流負荷を与え、両側精巣を採取した。sham手術群、虚血のみの群、虚血再灌流群の3群を作成した。負荷強度は虚血時間は1時間、再灌流時間は24時間に設定した。採取した両側精巣に対して、HE染色、TUNEL染色を行い、虚血再灌流障害の評価を行った。 HE染色では患側精巣において精細管を構成する細胞配列の乱れや間質浮腫の所見が見られ、TUNEL染色では虚血再灌流群において患側で他の2群よりも有意にアポトーシスが検出された。なお虚血のみの群でもTUNEL陽性細胞が増加している傾向がみられたが、有意な増加ではなかった。この結果から、本研究で想定していた「精巣を温存できた患者における虚血再灌流障害」を評価するための疾患モデルを確立できたと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は疾患モデル作成まで行う予定としており、負荷強度の決定に伴い予定通りモデルの確立ができた。しかし、負荷強度の決定にあたり、異なる負荷強度のモデルを作成して適切な負荷を探る工程に時間を要した。すなわち、虚血負荷が強すぎては再灌流負荷を与える以前に精巣に不可逆的変化をきたして救済不可となるおそれがあり、負荷が弱すぎては続く希少糖の治療効果評価が十分に行えない可能性があった。最終的に虚血時間1時間、再灌流時間24時間に決定した。評価項目について、計画では酸化ストレスマーカーの測定と、トレーサー注射による血液精巣関門の評価も行うこととしていたが、負荷強度の決定に時間を要した影響もあり、初年度内では完了できなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度中に完了できなかった評価項目について、順次サンプル採取と測定を進めていく。次年度は予定通りに希少糖投与実験を行い、虚血再灌流障害に対するDアロースの治療的効果について検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
負荷条件の設定に時間を要した影響で、初年度に予定していた検査のなかで行えなかったものが生じたため、それに関わる経費が計上できなかったとともに、使用した動物数も予定より少なくなった。これらの差額は次年度以降に繰り越して実験を行う際に使用する予定である。
|