本研究の目的は、敗血症モデルに対して光治療を行った際に、血小板関連因子が抗炎症効果に与える影響について検討し、光治療の機序を解明することである。集中治療領域において依然重篤な病態である敗血症に対し、光治療を応用した臨床治療開発につなげることを目標としている。 我々はこれまでの先行実験で、自然光を模したLED光照射が照度依存性に抗炎症効果を有し、肺傷害を軽減することを見出した。また、各種波長光を用いて同様の光照射実験を行い、緑色波長光で炎症性サイトカインの抑制と抗炎症サイトカインの増加を認めた。そこで、緑色LED光照射を行ったマウス肺のRNAマイクロアレイ解析を行ったところ、光依存性に変動した遺伝子のうち約40%が血小板関連遺伝子であり、光治療の未知の機序に血小板が関連していることが示唆された。 2019年度は、先行実験で得られたマイクロアレイの結果をもとに、緑色LED光を照射した際の血小板関連遺伝子発現の日内変動について検討を行った。経時的に肺組織中の遺伝子発現量をリアルタイムPCRで定量解析行ったところ、Ppbp(pro-platelet basic protein)とLtf(lactotransferrin)は緑色LED光照射による発現量の変化を認め、マイクロアレイの結果と一致した結果が得られた。さらに、これらの遺伝子に時間依存性の変化も認められた。 現在、盲腸結紮穿刺(CLP)による敗血症モデルを作成し、緑色LED光の肺保護効果について検討を行っている。CLPモデルにおいても同様の緑色LED光の肺保護効果が認められた場合、上記血小板関連遺伝子の解析を行い、その役割について検討を行っていく。
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