研究課題/領域番号 |
19K18361
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 史洋 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80383610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ARDS / Cigarette Smoke / SIRS / LPS / CSE / CXADR |
研究実績の概要 |
ARDSのin vitroにおける再現モデルとして、ヒト正常気道上皮細胞(Normal Human Airway Basal Cells; NHBC)を用いて、Plastic cell cultureにおけるARDSモデルを作成した。70% confluentを確認したのちに、PBSおよびLipopolysaccharide (LPS)投与後6時間後に回収した細胞に対してARDSによる炎症性変化の証明の為に測定したTLR4はPBSでも増加していた。また、ARDSの炎症発現を確認するためのHMGB1発現は、濃度依存性に発現増加が認められた。心筋炎等で報告されている炎症性疾患に関わるCoxackie and Adenovirus Receptor(CXADR)の発現に注目し、測定したところHMGB1同様LPS濃度依存性の発現増加が認められた。よってCXADRがARDS発現に関与している可能性が示唆された。 次に、このモデルにCigarette Smoke Extract (CSE) を付加したところ、CSE群でCXADR発現増加を認めた。CSE付加後のLPS付加では有意なCXADRの発現増加は認められなかった。以上より喫煙刺激がARDS発症のリスクの増加を助長している可能性が示唆された。 ARDSの動物モデルとして、C57BL6マウスにLPS気道投与24時間後の肺病理学的評価およびWestern blotにて炎症性因子の解析を行った。PBS群には炎症細胞浸潤や間質の炎症性変化や壁肥厚、肺胞内の浸出液貯留などは認められなかったが、LPS群ではその所見が認められ、ARDS作成が可能であった。また、同個体から採取した検体からタンパクを抽出し、Western blotを行ったところ、in vitroでの結果同様TLR4, HMGB1, CXADRの発現の増加を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初細胞培養に関しては気道上皮をMimicするAir Liquid Interface(ALI)をこの実験に取り入れてより生体構造に近い状況での評価を考えていたが、preliminary experimentでなかなか再現ができず、今回ALIに関してはこの期間中に構築することができなかった。しかし、Plastic cultureでも気道上皮という肺特有の細胞からLPSによるARDSの再現が可能であり、そこから今回Key factorと考えているCXADRを同定することができ、今後のtarget factorとすることができた。 in vivoの実験においても、腹腔内投与ARDSモデルや気管挿管ARDSモデルも施行したが、前者の場合はARDSになる前に死亡する症例が多く、また後者のモデルにおいても煩雑な作業が多く、実験がなかなか進まなかった可能性がある。早期の段階で、解剖学的経気道LPS投与モデルに行き着いたため、この部分に関しての時間のロスは少なかった可能性がある。ただ、in vivoモデルにおいてもin vitroで得られたCXADRの関与を確認することができた。 喫煙モデルの作成に非常に苦労した。in vivoにおける喫煙実験のQuality Controlが非常に難しく、自作の喫煙マシーン作成に非常に苦労し、まだin vivoにおける喫煙の関係が証明されていない。この作業に時間を要した。 以上より概ね順調に研究は遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記もうまくいかない事項に関して、in vitroにおいては再度環境を整えた上でALIの確立を目指す。そこからARDSのよりrealなモデルを作成し、ARDSにおける生物学的測定を行う。 喫煙実験に関しては、昨年度も他施設の同様実験をされている先生との共同研究を進めることでこの問題を解決し、喫煙とARDSとの関係を探っていく。 CXADRがARDSのkey factorであるとの考えより、CXADR KOマウスを購入し、実際にKOでのARDSの発症具合などを確認し、そこからシグナル伝達経路を探り、治療法につなげていければと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
CXADR KOマウスを購入するために前倒し支出を請求したが、年度末に間に合うようにしていたが、結局COVID-19の影響および海外からの購入でマウスの発育が悪く、その分の支出は必要なかったため、この前倒し支出は使用しなかった。 この前倒し支出分は世界的なCOVID-19騒動が落ち着き、CXADR KOマウスが譲渡された段階でその分の費用として使用する予定である。
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