研究課題/領域番号 |
19K18361
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小川 史洋 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80383610)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 喫煙 / ARDS / CSE / 血管障害 / グリコカリックス / シンデカン-1 |
研究実績の概要 |
本年度の実績に関しては、in vivo CODP modelの作成に関して、Cigarette smoke extract(CSE)による安定した慢性刺激を与えるためにosmotic pumpを用いたモデルにて作成し、走査型電子顕微鏡・透過型電子顕微鏡を用いて喫煙による肺障害を捉え、さらに喫煙が引き起こす血管障害についても確認することができた。この慢性的な刺激による血管障害が各種臓器障害に繋がり、慢性的な血管内バリアの剥離によってAcute Respiratory Distress Syndrome(ARDS)が生じやすくなることが考えられた。この血管障害には血管内皮を覆う糖タンパク質であるグリコカリックスが関与しており、喫煙によるグリコカリックスの剥離が血管内皮バリアの障害であることが血清シンデカン-1(グリコカリックス構成要素)濃度を測定し、喫煙モデルで有意に増加していることがわかった。これは現在蔓延している新型コロナウイルス感染症は、血管炎によるARDS様症状を呈すると言われているが、研究責任者は、患者血清でも重症患者では明らかに上昇していることが別研究で明らかとなったため論文化している。 喫煙による肺実質の障害に注目されがちであるが、全身臓器の血管障害を生じる喫煙による影響を考慮し、今後の研究を進めていくこととする。 さらに、マウスの種類によって喫煙慢性刺激による肺障害の程度の差を検討することによって、遺伝的背景のよる喫煙習慣の影響も検討することがpreliminary dataとして得られたため、遺伝的背景と喫煙による肺障害・重要臓器障害についても検討していく筋道が立てられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までの腹腔内投与による喫煙モデルに関しては、肺障害や生化学的検討においてデータのばらつきがあり、モデルの作成に苦労し、思ったデータが出ていない状況であったが、本年度現在まで中国から発表されていた論文の作成方法を見直し、Osmotic pumpを用いたCSEでの慢性刺激による肺障害の程度を検討することに方向を変え、また光顕レベルの評価では本質は見出せないと判断し、電子顕微鏡での評価を行ったところ、血管内皮障害を評価することが可能であり、肺障害に寄与していることがわかった。この評価に時間がかかってしまったため、最終的に評価をしたいと考えているARDSに関する評価がまだ行えておらずやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に確立したモデルをPreliminaryとして出せた成果を再現性あるものとして確立し、これに対して今までにin vitroで出てきていたLypopolysaccharide(LPS)を気道内投与を行うことで、ARDSを再度作成し、その関連するシグナルを同定したいと考えている。また、一昨年度にARDSの発生に関与していると報告したコクサッキーアデノウイルス受容体(CXADR)との関連についてもCXADR KO miceの作成がほぼ完了したため、本年度喫煙関連ARDSとCXADRの関連について検討を行っていく方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は予定していたよりも少額で実験可能であり、また、各種国際学会を含む、学会参加が全世界的なコロナウイルス感染症の蔓延で叶わなかった。その分繰越金が多く発生し、2022年度に繰り越されてしまった。ただし、2022年度は電子顕微鏡での検体観察やELISA・PCR等で多額の資金が必要になると考えているため、その分の費用として使用する方向で考えている。またコロナウイルス感染症に関しても終息はしていないまでも国際学会や国内学会への参加も可能であるため、そのあたりでの研究成果発表および論文投稿に使用したいと計画している。
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