救急領域・集中治療領域において全身炎症症候群(SIRS)によって生じる肺胞領域の非特異的炎症による透過性亢進型肺水腫を病態とする急性 呼吸窮迫症候群(ARDS)を経験することは多い。世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症に関してもARDSの病態を呈している。しかし、ARDSの概念が提唱されているにも関わらず、確固たる根本的治療法が確立されておらず、対症療法を行なっているのが現状であり、この根本的な治療法が確立さていないARDSを実験モデルであるヒト気道上皮細胞(BCs)および実験動物を用いたARDSモデルおよび炎症に関与していると考えられているコクサッキーアデノウイルス受容体(CXADR) KOマウスを用いて、その鍵となる因子・シグナルを同定・解析する。それに加えて呼吸疾患の増悪因子である喫煙習慣との関連についてARDSの革新的根本的治療法の確立することを目的とした。 今回の科研費助成において、in vivo 滲出期ARDS modelにおけるLPS気道内単独投与48時間後の評価として、LPS群ではPBS群には見られなかった炎症細胞浸潤や間質の炎症性変化や壁肥厚、肺胞内の浸出液貯留など滲出期ARDSに相当する所見が認められた。タンパク質レベルにおいて、LPS群でCXADRを含め肺胞破壊マーカーの発現増加を認めた。以上よりLPS誘発ARDSにはCXADRが関与していることがわかった。さらに、走査型電子顕微鏡で血管内皮のGlycocalyxを観察したところ、喫煙modelではGlycocalyxが剥離しており、喫煙による血管透過性亢進し、ARDS増悪につながる可能性が示唆された。 in vitro modelとしてBCs培養のLPS投与において、LPS投与群で濃度依存的にCXADR発現は増加しており、LPSによる炎症惹起とARDSとCXADRとの関連が示唆された。
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