研究実施計画に記載を行ったメトホルミンを用いて各実験を実施したが、予想された敗血症抵抗性を確認する結果は得られず、好中球の遊走能の改善も認められなかった。そのため、代替薬として老化研究に対して多くの報告が認められるnicotinamide mononucleotide(NMN)を使用することで実施計画に記載した効果が得られる可能性を考え、NMNを用いて各実験を遂行した。 ①好中球遊走能実験に関して:3ヶ月齢と12ヶ月齢のラットから好中球を分離し、好中球遊走能をmicrofluidic deviceを用いて比較検討した。老齢ラットでは好中球遊走能が低下しており、NMNを投与することで、その機能低下を有意に改善する効果が認められた。 ②敗血症抵抗性の評価(生存実験)に関して:老化マウスにNMNもしくは溶媒を、経管で1週間投与した。1週後に盲腸結紮による敗血症ストレスを追加し生存率を比較検討し、有意にNMN投与群で生存率が改善することを確認した。 ③各群のマウスから肺と腎臓を摘出し、臓器障害の程度を比較し、NMN治療群で敗血症ストレス追加後の臓器障害が改善している事を確認した。 ④好中球内の代謝状況を確認するため、当初の研究実施計画に記載した方法より網羅的に解析を行うため、メタボローム解析を施行することとした。3ヶ月齢、12ヶ月齢のラット、NMN投与を行った12ヶ月齢ラットから、それぞれ好中球を分離しメタボローム解析の予備実験を行った。各群n=5としてNMN投与を行った12ヶ月齢ラットでは好中球内のEnergy chargeが有意に改善している事を明らかにした。 以上の結果をまとめて、英文論文を執筆中である。
|