研究実績の概要 |
頭部外傷は凝固線溶系障害を伴うが、小児頭部外傷における凝固線溶系障害の経時変化は不明である。研究代表者は小児頭部外傷における凝固線溶系障害の経時変化の特徴や成人との違いを解析した。2007年4月から2018年12月までの間に、受傷から1時間以内に搬送されたAIS 3以上の頭部外傷患者を対象とし、傾向スコアマッチングを用いて小児群(年齢<16歳)と成人群(年齢≧16歳)の背景因子(性別、GCS、頭部外傷の病型、各損傷部位AIS、ISS)を調整した2群を抽出した。病着時、受傷3、6、12時間後のPT-INR、APTT、Fibrinogen、D-dimerを2群間比較した。468例の頭部外傷患者のうち、小児群と成人群のそれぞれ46例をマッチさせた。小児群と成人群はともにPT-INRやAPTT、D-dimerは受傷3時間後に最大値、Fibrinogenは受傷3時間後に最低値となったが、小児群は成人群と比較して有意に病着時から受傷12時間後までのPT-INR、APTTが高く、病着時から受傷6時間後までのFibrinogenが低かった。以上から、頭部外傷急性期において、小児は成人と同様の凝固線溶系マーカーの経時変化をすことが明らかとなった。 以上を、研究代表者は、第80回 日本脳神経外科学会総会シンポジウムで発表し、2021年に英文紙で報告した(2.Nakae R, Fujiki Y, Takayama Y, Kanaya T, Igarashi Y, Suzuki G, Naoe Y, Yokobori S. (2021) Time Course of Coagulation and Fibrinolytic Parameters in Pediatric Traumatic Brain Injury. J Neurosurg Pediatr. 28(5):526-532.)。
|