研究課題/領域番号 |
19K18371
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
井上 岳人 兵庫医科大学, 医学部, 研究生(研究員) (30772652)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セルトリ細胞 / アポトーシス / エンドトキシン / 急性炎症 / デスレセプター経路 / インターロイキンー18 / 精巣 |
研究実績の概要 |
我々は急性炎症時に精巣内で発現が上昇する過剰なIL-18により生殖細胞およびライディッヒ細胞のアポトーシスが誘起される可能性を示してきた。平成31年度は、まず、マウスセルトリ細胞由来TM4細胞を用いてin vitroで炎症刺激(lipopolysaccaride: LPS)を行い、セルトリ細胞のIL-18発現に変化があるのか検証した。結果、セルトリ細胞のIL-6等の炎症性サイトカインの発現は増加し、炎症反応は惹起されるものの、IL-18の発現は増加しなかった(炎症刺激下でライディッヒ細胞のIL-18の発現は増加せず、マクロファージのIL-18の発現は増加した)。従って、急性炎症下での精巣内のIL-18濃度の上昇は免疫細胞由来である可能性が推察され、精巣に浸潤する免疫細胞由来のIL-18を抑制することが全身性炎症下に起因する精巣炎の治療ターゲットになりうるのではないかと考えられた。次に、炎症刺激後、どの時点でTM4細胞アポトーシス関連因子の発現に変化があるのか経時的に検証した。LPS刺激によりデスレセプター経路関連因子の発現が、刺激1時間後で上昇し、刺激12時間で発現が刺激0時間のベースラインと差がなくなることが明らかとなった。ライディッヒ細胞では刺激12時間後でデスレセプター経路関連因子の発現が上昇しており、精巣細胞において発現が増加されるまでの時間が異なることが明らかとなった。本研究により平成31年度予定していた「IL-18とセルトリ細胞のアポトーシスシグナル伝達経路との関係性の検証」を検討するための基盤となる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成31年度予定していた、炎症刺激下のセルトリ細胞のアポトーシスならびにIL-18産生能の検証はおおむね順調に進んでおり、炎症刺激下でのセルトリ細胞のアポトーシスを調整する因子の発現を確認することができた。また、炎症刺激によりセルトリ細胞の炎症反応は惹起されるものの、IL-18の発現は増加せず(炎症刺激下でライディッヒ細胞のIL-18の発現は増加せず、マクロファージのIL-18の発現は増加した)、急性炎症下での精巣内のIL-18濃度の上昇は免疫細胞由来である可能性が推察される結果が得られており、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
<IL-18とセルトリ細胞のアポトーシスシグナル伝達経路との関係性の検証>急性炎症下の精巣ではIL-18の発現の増加が確認されている。セルトリ細胞由来TM4細胞をrecombinant IL-18で刺激し、セルトリ細胞に対するIL-18の働きを解析する。アポトーシスのシグナル伝達経路であるデスレセプター経路関連因子およびミトコンドリア経路関連因子の発現を解析する予定である。 <敗血症モデルマウスにIL-18中和抗体を投与することにより精巣生殖細胞のアポトーシスを抑止できるか検証する>雄性9-10週齢C57BL/6JマウスにLPSを腹腔内投与し、エンドトキシン血症マウスを作製する。1時間毎にマウスの行動観察をし、昏睡状態やその後の回復状態により急性期モデルおよび回復期モデルを判断する。IL-18中和抗体投与によりエンドトキシン血症モデルマウスの精巣生殖細胞のアポトーシスを抑制できるか検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「炎症刺激下のセルトリ細胞のアポトーシスならびにIL-18産生能の検証」のために参考とした論文では培養条件が適しておらず、培養条件の設定に時間を要した。そのため平成31年度~令和2年度にかけ予定していた「IL-18とセルトリ細胞のアポトーシスシグナル伝達経路との関係性の検証」に関する一部の実験が行われておらず、当該実験に関する予算が未使用となり次年度使用が生じた。次年度は当初予定していたrecombinant IL-18刺激実験を継続して行うための試薬等の購入に使用していく。
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