研究課題
我々は急性炎症時に精巣内で発現が上昇する過剰なインターロイキン-18(IL-18)により生殖細胞およびライディッヒ細胞のアポトーシスが誘起される可能性を示してきた。本研究では精子形成に関与するセルトリ細胞のアポトーシスとLipopolysaccharide(LPS)およびIL-18との関係性を検証した。マウスセルトリ細胞由来TM4細胞をLPSあるいはrecombinant IL-18(rIL-18)で刺激し、炎症反応およびアポトーシスシグナル伝達経路の一つであるデスレセプターを介する経路の関連因子の発現を解析した。LPSおよびrIL-18刺激によりセルトリ細胞の炎症反応は惹起された。しかし両刺激ともセルトリ細胞のアポトーシスを誘導しなかった。デスレセプター経路関連因子の発現に着目すると、LPS刺激ではFas/Fasl経路のFasの発現は増加するもののFaslの発現を低下させた。LPSはTnfr1やFadd発現にほとんど影響を与えなかった。しかし、rIL-18刺激はTnf/Tnfr1経路のTnfr1を減少させるものの、Tnf-α、Fasl、Fas、Faddの発現にほとんど影響を及ぼさなかった。以上の結果から、セルトリ細胞は外因性炎症刺激物質(LPS)および内因性炎症刺激物質(高濃度rIL-18)の刺激に対し、感受性が低く、強い炎症刺激にもかかわらずアポトーシスを起こしにくいことが示唆された。また、刺激因子の種類によりアポトーシスを回避する機構が異なることが明らかとなった。本研究結果はライディッヒ細胞のアポトーシスがLPSとrIL-18刺激によりFas/Fasl/caspase-8依存的およびTnf/Tnfr1/caspase-8依存的経路を介して誘導されることを示した我々の既報と対照的であった。故に、セルトリ細胞は炎症刺激に耐性があり、精巣の他の構成細胞よりも精巣の恒常性を維持する上で大きな役割を果たしている可能性が示唆された。
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Journal of Reproductive Immunology
巻: 158 ページ: 103970~103970
10.1016/j.jri.2023.103970