本研究は、pediatric intensive care unit(PICU)を生存退室した重篤小児患者とその家族を対象とした多施設前向きコホート研究である。PICUに入室した患者とその家族が、退室後にどのような機能障害を残すのか、その障害がどれほどの期間持続するのか、どのような社会資源や医療ケアを必要とするのか、教育/療育環境にどのような変化が起こるのか等について調査し、小児におけるpost-intensive care syndrome; PICSの実態を把握することが目的である。 2020年3月から2022年2月の2年間にわたって国立成育医療研究センターのPICUに48時間以上入室した重篤小児患者の保護者を対象として、パイロット研究を実施した。患者が退室した1か月後、3か月後、6か月後、12か月後に保護者にWebアンケートを送付し、家族からみた患者のFunctional Status Scale(FSS)、家族のHospital Anxiety and Depression Scale (HAD)等を評価した。 期間中に1722名の入室があり、最終的に348名の患者が対象となった。アンケートの回答率は1か月後、3か月後、6か月後、12か月後でそれぞれ51.7%、44.0%、39.4%、33.2%、対象患者の月齢中央値は22か月 、PICU在室日数中央値は8日であった。 退室1か月後、3か月後、6か月後、12か月後の患者FSSは概ね"good"の範囲で推移したが、家族HADについては不安ドメインも抑うつドメインも"possible"の範囲で推移し、長期に障害が継続することが判明した。PICU退室後の患者の就学割合は時間経過とともに改善した。 今後は、パイロット研究で明らかとなった課題の解決を図りつつ、本研究への参加を希望する全国のPICU施設とともに多施設研究を展開する。
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