膠芽腫における、腫瘍組織内の幹細胞局在について検討した。 腫瘍幹細胞の存在による腫瘍組織周辺への腫瘍細胞浸潤について検討を進め、MRIの拡散強調画像によるADC値が、腫瘍細胞の浸潤と相関していることを仮説に、検討を行った。また、膠芽腫の代表的な遺伝子異常であるTelomerase reverse transcriptase(TERT)プロモーター領域における変異(TERT変異)の有無が膠芽腫の浸潤能に関与していることも明らかとなってきている。TERT変異を有する膠芽腫では腫瘍周囲への腫瘍細胞浸潤が高度であるという仮説のもと、TERT変異の有無とFLAIR 高信号域のADCと病理組織像との関連の評価を行った。 膠芽腫症例の術前MRIおよび摘出した腫瘍とその周辺組織の病理組織標本について、FLAIR高信号域のADC値と病理組織像とを比較検討した。また、通常の病理組織学的診断に加えて分子遺伝学的検索も行い、TERT、MGMT、IDH等の評価も行った。 TERT変異について解析を行った初発膠芽腫90例と、そのうち造影病変周囲のFLAIR高信号域から標本を採取しえた初発膠芽腫10症例(計19カ所)について検討した。TERT変異を有する症例では、周辺FLAIR高信号域のminimum ADC値が有意に低値であった。また、ADC値の低い部分では比較的異型細胞の細胞密度が高く、腫瘍細胞の浸潤が疑われる所見を呈することが多かった。また、TERT変異症例ではADC値が低い傾向にあった。 以上の結果から、TERT変異膠芽腫症例では造影病変周囲のFLAIR高信号域への腫瘍浸潤が高度であることが示唆された。膠芽腫の腫瘍周囲FLAIR high lesionにおける腫瘍細胞浸潤がADC値と関連しTERT変異とも関連していることを明らかとし、論文報告を行った。
|